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肩の痛みは腱板断裂が原因かも?症状と治療法を徹底解説!あなたの断裂タイプは?〜五十肩との違いは?

掲載日:2024.09.30


腱板断裂という言葉を聞いたことはありませんか?プロ野球の投手が肩を痛めて腱板損傷や腱板断裂でしばらく休んだり手術するという記事を見かけますね。けれども、実はスポーツ選手だけでなく、普通に生活しているだけでも腱板断裂になることは珍しくありません。肩の痛みや腕が上がりにくいといった症状でお悩みの方は、ぜひ最後までお読みください。

————目次————
1.腱板断裂とは?
2.腱板断裂の原因
3.腱板断裂のセルフチェック
4.腱板断裂の診断方法
5.腱板断裂の治療法
6.腱板断裂のリハビリ
7.腱板断裂を放置するとどうなる?
8.腱板断裂のセルフケア
9.腱板断裂:やってはいけないこと
10.五十肩と腱板断裂の違い
11.まとめ
12.参考文献

腱板断裂とは?

腱板断裂とは」どういう病態か、簡単に説明しましょう。
 
腱板(けんばん)は、肩の関節を安定させ、腕を動かすための4つの筋肉の(すじ)が集まったものです。この腱板が傷ついて切れてしまうのが「腱板断裂」あるいは「腱板損傷」です。断裂と損傷は同義語ですが、損傷の方は腱板が部分的に傷んでいる状態を指します。
腱板断裂の症状としては、以下のようなものがあります:
 

  1. 肩の痛み特に夜間にズキズキする痛み
  2. 腕が上がりにくくなる
  3. 腕に力が入りにくくなる

 
肩が上がらない」「肩が上がらない痛い」といった症状を感じたら、腱板断裂の可能性があります。どこが痛いか?というと、腱板が断裂して炎症を起こすと肩全体が痛くなりますが、特に上腕骨大結節という肩の外側や上腕骨小結節という肩の前方が痛みが強くなります。

腱板断裂の原因

腱板断裂の原因には、大きく分けて2つのタイプがあります。

1. 外傷による断裂(急性断裂)

  • ・転倒や重い物を持ち上げた時など、突然の力が加わって起こります。
  • ・50歳未満の若い人に多いです。

2. 擦り切れた断裂(変性断裂)

  • ・年齢とともに腱が徐々に擦り切れて起こります。
  • ・40代以降の方に多く見られます。

 
年齢が上がるにつれて、腱板断裂のリスクは高まります。研究によると、20代以下は9.7%に対し、40代で15%、50代で25%、60代で30%、70代で37%、80代以上では62%で腱板の損傷が見られました[1]

エコー 腱板断裂 MRI 腱板断裂

腱板断裂のセルフチェック

腱板断裂セルフチェック」として、自分で症状をチェックすることができます。以下の「腱板断裂テスト」を試してみましょう。

1. Jobeテスト

  • ・腕を肩の高さまで上げ、親指を下に向けます。
  • ・その状態で腕を押し下げようとする力に抵抗します。
  • ・痛みや力が入りにくい場合は、腱板断裂の可能性があります。

2. Empty can test

  • ・腕を肩の高さまで上げ、親指を下に向けます(空き缶を持つような形)。
  • ・その状態で腕を上に押し上げようとする力に抵抗します。
  • ・痛みや力が入りにくい場合は、腱板断裂の可能性があります。

3. 押さえた痛み

  • ・手をポケットに入れる姿勢をすると、上腕骨頭が肩の前方に触れます。
  • ・押さえた時に陥没した窪みや押さえた時に痛みがあると腱板断裂の可能性があります。

 
ただし、これらのチェックは参考程度です。正確な診断には、整形外科専門医の診察が必要です。

腱板断裂の診断方法

医療機関では、以下のような方法で腱板断裂を診断します:

1. 診察

  • ・医師が病状の問診を行い、直接肩を触って痛みや動きを確認します。

2. エコー検査

  • ・体に負担がなく、すぐに結果が分かります。
  • ・痛みもなく安全な検査方法です。

3. MRI検査

  • ・より詳しく腱板の状態を調べることができます。
  • ・軟骨や関節の中まで評価できます。

腱板断裂の治療法

腱板断裂治療には、大きく分けて2つの方法があります。

1. 保存療法

  • ・リハビリテーション:肩の正しい動かし方を指導します。
  • ・ヒアルロン酸注射:滑液包や関節内に注入して関節の動きを改善します。
  • ・痛み止めの注射:炎症を抑えて、安静時や運動時の痛みを取ります。
  • ストレッチ:肩の動きが悪くならないようにします。
  • 再生医療:断裂した腱板の再生を促します。

2. 手術療法

関節鏡 腱板断裂 関節鏡 腱板縫合後
  • ・関節鏡手術:皮膚に小さな穴を開けて内視鏡で断裂した腱板を修復します 保険診療で腱板の再生を促進するコラーゲンシートを併用することができます
  • ・直視下手術:皮膚を切開して腱板を治したり、人工肩関節置換術を行います。

 
急性断裂は手術が必要になることが多いです。受傷してから4ヶ月以内の手術は特に回復が良好です。
 
変性断裂は、軽度の場合は保存療法から始めますが、3ヶ月程度治療しても改善しない場合や、初めから痛みが強く肩が動かせない場合は手術を検討します[2]

腱板断裂のリハビリ

腱板断裂のリハビリは、段階的に行います。

  • 1. 初期:痛みの軽減と炎症の抑制
  • 2. 中期:可動域の改善
  • 3. 後期:筋力強化

 
リハビリは医師の指示に基づいて理学療法士の指導下で行うことがとても大切です。

腱板断裂を放置するとどうなる?

腱板断裂放置するとどうなる」かというと、以下のような問題が起こる可能性があります。
 

  1. 断裂が大きくなる
  2. 症状が悪化する
  3. 治療が困難になる
  4. 筋力が低下する
  5. 関節軟骨にも悪影響が出る

 
早めに適切な治療を受けることが大切です[3]

腱板断裂のセルフケア

家庭でできるセルフケアとしては、以下のようなものがあります。

1. 冷やす・温める

  • ・急性期(怪我した直後など)は冷やす。
  • ・慢性期は温める。
  • ・ただし、個人差があるので、心地よい方を選びましょう。

2. ストレッチ

  • ・痛みのない範囲で軽いストレッチを行う。
  • ・「肩が上がらないストレッチ」として、壁を使って腕をゆっくり上げるなど

3. 生活習慣の見直し

  • ・重い物を持ち上げないなど、肩に負担をかけない工夫をする。

腱板断裂:やってはいけないこと

腱板断裂やってはいけないこととして、以下のようなものがあります。
 

  1. 痛みがあるのに無理に腕を動かす
  2. 痛みを我慢して日常生活を続ける
  3. 自己判断で治療を中断する
  4. 過度のストレッチや運動

 
これらは症状を悪化させる可能性があるので注意しましょう。

五十肩と腱板断裂の違い

肩の痛みといえば「五十肩」という言葉をよく耳にしますが、腱板断裂と五十肩(医学的には「凍結肩」と呼びます)は異なる疾患です。ここでその違いを詳しく説明しましょう。

1. 原因と発症メカニズム

  • ・腱板断裂:腱板を構成する腱が断裂することで起こります。肩の構造が破綻します。
  • ・五十肩:肩を包む関節包という袋状の組織が炎症を起こし、徐々に固まっていくことで発症します[4]。肩の構造は正常です。

2. 年齢層

  • ・腱板断裂:40代以降に増加し、年齢とともにリスクが高まります。
  • ・五十肩:40〜60代に多く見られます[5]

3. 痛みのパターン

  • ・腱板断裂:特定の動作(腕を上げる、後ろに回すなど)で痛みが生じます。
  • ・五十肩:安静時でも痛みがあり、特に夜間に痛みが強くなる傾向があります[5]

4. 可動域

  • ・腱板断裂:痛みのため動かしにくくなりますが、他動的(誰かに動かしてもらう)には動きます。
  • ・五十肩:自分で動かすことも、他人に動かしてもらうこともできないほど固くなります[4]

5. 治療法

  • ・腱板断裂:断裂の程度によって保存療法か手術療法を選択します。
  • ・五十肩:通常、時間とともに自然に改善していきます。ステロイド注射やリハビリテーションで症状を緩和します[5]

6. 予後(経過)

  • ・腱板断裂:適切な治療を受けないと徐々に悪化する可能性があります。
  • ・五十肩:多くの場合、1〜3年程度で自然に改善します[4]

 
これらの違いから、肩専門医による正確な診断が重要であることがわかります。肩の痛みや動きの制限がある場合は、早めにお近くの整形外科専門医を受診して、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。

まとめ


腱板断裂は、適切な治療を受けることで多くの方が日常生活やスポーツに復帰できています。肩の痛みや「肩が上がらない原因」「急に肩が上がらない」といった症状がある場合は、早めに整形外科専門医の診察を受けることをおすすめします。
 
肩の痛みは本当にストレスで生活の質を大きく低下させます。早期発見・早期治療で、軟骨を守って痛みのない明るく楽しい健康な生活を送りましょう。中山クリニックは笑顔と健康で皆様が幸せな毎日を過ごせるよう日々の診療に臨んでおります。

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参考文献

  1. Teunis T, et al. A systematic review and pooled analysis of the prevalence of rotator cuff disease with increasing age. J Shoulder Elbow Surg. 2014;23(12):1913-1921
  2. Abdelwahab A, et al. Traumatic rotator cuff tears – Current concepts in diagnosis and management. J Clin Orthop Trauma. 2021 Jul-Aug;19:136-144.
  3. Zingg PO, et al. Clinical and structural outcomes of nonoperative management of massive rotator cuff tears. J Bone Joint Surg Am. 2007;89(9):1928-1934.
  4. Vastamäki H, Ristolainen L, Vastamäki M. Range of motion of diabetic frozen shoulder recovers to the contralateral level. J Int Med Res. 2016 Dec;44(6):1191-1199. doi: 10.1177/0300060516672124.
  5. Ramirez J. Adhesive Capsulitis: Diagnosis and Management. Am Fam Physician. 2019 Mar 1;99(5):297-300. PMID: 30811157.