「五十肩と腱板断裂の違いを詳しく解説!知っておくべき症状と治療法は? 」
掲載日:2024.10.16
肩の痛みや動きの制限で悩んだことはありませんか?突然、腕が上がりにくくなったり、夜中に痛みで目が覚めたりすると、日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。そんな肩のトラブルの中でも、よく耳にするのが「五十肩」と「腱板断裂」。実はこの二つ、全然違う疾患なんですね!
今回は、この二つの違いをわかりやすく解説していきます。肩の痛みでお悩みの方や肩の動きが悪いのが気になっている方、これから年を重ねると健康が気になる方、必見です!
1.五十肩と腱板断裂、その原因とは?
2.症状の違いは?
3.診断方法:MRIと運動器エコーの役割
4.五十肩?腱板断裂? セルフチェックのやり方を解説
5.治療法
6.放置するとどうなる?自然治癒はあるの?
7.やってはいけないこと
8.まとめ:早期発見・早期治療が鍵
9.よくある質問
10.参考文献
五十肩と腱板断裂、その原因とは?
五十肩(医学的には肩関節周囲炎、癒着性肩関節包炎、凍結肩、拘縮肩などと表現されます)と腱板断裂は、どちらも肩の痛みや動きの制限を引き起こす代表的な疾患です。関節の動く範囲のことを可動域と言い、両疾患とも可動域は少なくなりますが、その原因や特徴には大きな違いがあります。
五十肩は、肩関節を包む袋(関節包)が炎症を起こして硬くなる病態です。特に後ろ側の関節包が硬くなりやすく、これが肩の動きを制限する大きな要因になっています[2]。正式な医学病名ではありませんが、日常用語として使われていますね。名前に「五十」とついていますが、40代で発症することもあり、これを「四十肩」と呼ぶこともあります。病態として五十肩と四十肩の違いはありません。
一方、腱板断裂は文字通り、肩の関節を動かす筋肉の腱(腱板)が切れてしまう状態です。主に棘上筋、棘下筋、肩甲下筋の腱が影響を受けます[1]。年齢とともに発症リスクが高まるのが特徴です。
症状の違いは?
五十肩と腱板断裂、症状にも違いがあります。自分の症状がどちらに近いか、チェックしてみましょう!
五十肩の症状
- ・肩のあらゆる方向への動きが制限される(全ての可動域)
- ・特に手を背中に回す動作(内旋)が難しくなる
- ・初めは痛みが強く夜間痛もあるけど、少しずつ収まってくる
腱板断裂の症状
- ・特に腕を横に上げる(外転)
- ・外に回す(外旋)など特定の動きが制限される
- ・痛みが強く、夜中に痛くて目が覚めることも
- ・腕を上げようとしても力が入らない
五十肩の場合、肩全体の動きが悪くなりますが、腱板断裂では特定の動作だけが困難になることが多いと報告されています[1][2]。
診断方法:MRIと運動器エコーの役割
正確な診断には、医師による診察と適切な画像検査が欠かせません。
五十肩の診断
- ・問診と身体診察が基本(可動域)
- ・レントゲン検査(骨の状態や腱の石灰化を確認)
- ・MRIで関節包が分厚くなって関節が狭くなる(*五十肩と診断されてもMRIで腱板断裂が見つかることがあります)
腱板断裂の診断
- ・問診と身体診察(腱板断裂テストなど)
- ・レントゲン検査(骨棘や関節の隙間を確認)
- ・超音波検査(運動器エコー)で腱の断裂した状態を確認
- ・MRIでより詳細な状態を把握
MRIは両方の診断に役立ちますが、特に腱板断裂の診断では重要な役割を果たします。断裂の程度や範囲を正確に把握できるからです[5]。運動器エコーは、すぐに腱の状態を観察できる利点があります。
正常肩 エコー画像 | 腱板断裂 エコー画像 |
五十肩?腱板断裂? セルフチェックのやり方を解説
同じように五十肩も腱板断裂も痛みがありますね。自分で腱板が切れたのを疑う方法もあります。drop arm signというテストです。下垂位として、患側の腕を健側の手で持ちながら横から持ち上げて90度上げます。そこで健側の手を離し、ゆっくりと患側の手を下ろします。途中で支え切れなくなって腕が急に落ちる(drop arm)と腱板が切れている可能性があります。けれども、しっかりと診断するには整形外科専門医の診断を受けましょう。
治療法
正しく診断がついたら、次は治療ですね。でも、五十肩と腱板断裂では治療アプローチが異なります。自宅で行うセルフストレッチも大事ですよ。
五十肩の治療
- ・リハビリ:ストレッチや可動域訓練を行います
- ・注射:痛み止めやステロイド注射、エコー下のハイドロリリース
- ・非観血的授動術(サイレントマニュピレーション):外来での治療です。骨粗鬆症が強い場合や腱板断裂などによる拘縮は適応になりません。
- ・内視鏡による授動術:1cmほど皮膚を2箇所切って内視鏡による治療です。入院での治療です。
腱板断裂の治療
- ・リハビリ:肩の可動域訓練や残存した腱板の機能訓練を行います
- ・注射:断裂した部位に痛み止めやヒアルロン酸を打ち、関節を動かします
- ・内視鏡による修復術:転倒やスポーツなど腱板が突然切れた場合や保存治療で痛みが改善しない場合は手術が推奨されます。手術は内視鏡で1cmほど皮膚を数箇所切って、断裂した腱板を縫合します。最近はコラーゲンシートによる腱板の補強も保険診療でできます。術後のリハビリがとても重要になります
五十肩は時間とともに自然に治ることが多いため、まずは保存的な治療から始めます。一方、腱板断裂は断裂の程度によって治療法が変わってきます[1][5]。
放置するとどうなる?自然治癒はあるの?
「様子を見よう」と放置してしまいがちな肩の痛み。でも、それぞれどうなるのでしょうか?
五十肩の場合
- ・多くの場合、1〜3年程度で自然に治癒
- ・ただし、適切な治療を受けることで回復が早まる可能性も
腱板断裂の場合
- ・小さな断裂なら残った腱板が機能を代償するので痛み楽になることもあります
- ・大きな断裂や完全断裂の場合、放置すると段々と断裂が大きくなり症状が悪化していきます[3]
- ・筋肉の萎縮や脂肪変性が進行して、関節軟骨も破壊され変形性肩関節症に進行します(cuff tear arthropaty)[6]。
五十肩は時間とともに改善することが多いですが、腱板断裂は放置すると取り返しのつかないことになる危険があります。早めの受診が大切です!
やってはいけないこと
痛みを我慢して無理に動かすのは、どちらの場合もNG!でも、それ以外にも注意点があります。
五十肩の場合
- ・過度な安静は避ける(適度な運動は大切)
- ・痛みを我慢して無理に動かさない
- ・痛すぎるマッサージやストレッチ(炎症を悪化させる可能性)
腱板断裂の場合
- ・重いものを持つなど、肩に負担をかける動作
- ・断裂を悪化させる可能性のある激しいスポーツ
- ・医師の指示なしでの過度なストレッチや運動
どちらの場合も、適切な診断を受けてから、医師や理学療法士の指導のもとでリハビリを行うことが大切です。
まとめ:早期発見・早期治療が鍵
五十肩と腱板断裂、似ているようで全然違う病気だということがわかりましたね。どちらも肩の痛みや動きの制限を引き起こしますが、その原因や治療法は大きく異なります。
- ・五十肩は関節包の炎症と硬化が原因
- ・腱板断裂は腱が断裂することが原因
- ・症状や治療法にも違いがある
- ・どちらも早期発見・早期治療が重要
肩の健康は日常生活の質に大きく影響します。痛みや違和感を感じたら、我慢せずに専門医の診察を受けましょう。適切な診断と治療で、あなたの肩の健康を取り戻すことができます。
兵庫県明石市の中山クリニックでは、最新のMRI装置を用いた精密診断を行っています。あなたの肩の状態を正確に把握し、最適な治療プランをご提案いたします。早めの受診で、肩の悩みを解決しましょう。MRI検査のご予約・ご相談は、お近くの整形外科専門医でご相談下さい。
よくある質問
Q1: 腱板損傷と腱板断裂の違いは?
A1: 腱板損傷は腱板に何らかの障害が起きている状態を広く指し、部分的な傷から完全な断裂まで含みます。一方、腱板断裂は腱板が切れている状態を指し、腱板損傷の一種です。しかし、腱板損傷が腱板の部分断裂、腱板断裂が完全断裂という表現をする場合もあります。
Q2: 腱板断裂テストや腱板損傷テストとは何ですか?
A2: これらは医師が行う身体診察の一部で、特定の動作をしてもらい、痛みや筋力の状態を確認するテストです。例えば、腕を特定の位置に保持してもらったり、抵抗に対して力を入れてもらったりします。
Q3: 五十肩や腱板断裂は完全に治りますか?
A3: 五十肩は多くの場合、適切な治療と時間経過で改善します。腱板断裂は、断裂の程度や治療法によって予後が変わりますが、筋肉が痛んだ状態(解剖学的な破綻)であっても、正しい理学療法士の指導下に行うリハビリで残った腱板や三角筋がカバーすれば(機能的な回復)、症状の改善が期待できます。
Q4: 腱板断裂に再生医療は効果ありますか?
A4: 腱板断裂に対して、PRPや脂肪幹細胞の移植が有効であるという報告[7]があります。
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参考文献
- [1] Takenaga T, et al. Predictive Factors Affecting the Outcome of Rotator Cuff Repair for Patients With Stiffness. Am J Sports Med. 2018;46(12):2833-2839.
- [2] Itoi E, et al. Shoulder stiffness: current concepts and concerns. Arthroscopy. 2016;32(7):1402-1414.
- [3] Yamamoto A, et al. Prevalence and risk factors of a rotator cuff tear in the general population. J Shoulder Elbow Surg. 2010;19(1):116-120.
- [4] Cho CH, et al. Treatment Strategy for Frozen Shoulder. Clin Orthop Surg. 2019;11(3):249-257.
- [5] Jain NB, et al. Clinical Examination of the Rotator Cuff. PM R. 2013;5(1):45-56.
- [6] Keener JD, et al. A prospective evaluation of survivorship of asymptomatic degenerative rotator cuff tears. J Bone Joint Surg Am. 2015;97(2):89-982.
- [7] Kim YS, et al. Does an Injection of Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cells Loaded in Fibrin Glue Influence Rotator Cuff Repair Outcomes? A Clinical and Magnetic Resonance Imaging Study. Am J Sports Med. 2017 Jul;45(9):2010-2018.