中山クリニック

五十肩の痛み、もう我慢しないで!一瞬で楽になる「最速」治療法とは?

掲載日:2025.01.17

あれ?なんだか肩が上がりにくい…」「腕を動かすとズキズキ痛む…」もしかしてそれ、五十肩かもしれません。服を着るのも、髪を洗うのも、洗濯物を干すのも、日常生活のちょっとした動作が苦痛になる五十肩。放っておけば自然に治る、なんて言われるけど、本当にそうでしょうか? 痛くて辛い日々を、いつまで我慢すれば良いのでしょう?今回は、そんな悩みを抱えるあなたに、五十肩の痛みを「最速」で解消する治療法について、とっておきの情報をお届けします。
肩痛い模型

————目次————
1.五十肩ってどんな病気?
2.五十肩の症状は?
3.五十肩の診断はどうやってするの?
4.五十肩の治療法は?
5.それでも治らない場合は?
6.サイレントマニュピレーションってどんな治療?
7.サイレントマニュピレーションを受ける上での注意点は?
8.サイレントマニュピレーションの医学的根拠は?
9.五十肩でやってはいけないことは?
10.症状がひどい場合は?
11.まとめ
12.MRI検査について

五十肩ってどんな病気?

五十肩とは、正式には「肩関節周囲炎」という名前がついていますが、その実態は、肩の関節や周囲の組織に炎症が起こり、痛みや動きの制限を引き起こすというもの。特に40代から60代にかけて発症しやすく、一度なると、痛みが数ヶ月、ひどい場合には年単位で続くこともあります。

五十肩の症状は?

五十肩の症状は、様々ですが、肩の痛みと動かしにくのが特徴です。
 

  • ・服を着たり脱いだりするときに肩が痛む
  • ・歯を磨くのが辛い
  • ・髪を洗ったり乾かしたりするのが大変
  • ・顔を片手でしか洗えない、化粧もできない
  • ・洗濯物を干す、布団の上げ下ろしができない

肩痛い模型

五十肩の診断はどうやってするの?

診断のためには、まずレントゲンで肩の骨の状態を確認します。次に、実際に肩を動かしてもらって、肩の動きや筋力をチェックします。さらに、エコーを使って、腱板(肩の筋肉の腱)の状態や石灰沈着の有無を確認することも有効です。MRIでは関節を包む袋である関節包が肥厚しており、関節の中にある滑膜が炎症を起こして腫れています。これらの検査で、骨折や腱板断裂などの他の疾患を除外した上で、肩の動きが制限され、痛みがある場合に五十肩と診断します。

五十肩の治療法は?

五十肩の治療においては、まず患者さんの痛みをできるだけ早く取り除くことを重視します。具体的には、エコーで確認しながら、炎症を起こしている関節の中に痛み止めやステロイド注射をしたり、神経の周りに麻酔を注射するハイドロリリースという方法も有効です。リハビリで肩の正しい動かし方を確認して自宅でできる簡単な体操も指導します。
肩エコー

それでも治らない場合は?

リハビリや注射でも痛みが引かない場合は、サイレントマニュピレーションという最速の治療法を提案することがあります。

サイレントマニュピレーションってどんな治療?

サイレントマニュピレーションとは、外来の診察室で行う治療法です。まず、エコーで確認しながら、肩から腕の神経に麻酔をかけます。麻酔が効いて、完全に痛みがなくなった状態で、固まってしまった肩の関節をゆっくりと動かし、肩の可動域を広げていきます。治療時間は、麻酔注射から約30分、実際の肩を動かすマニュピレーション自体は3分程度と短時間で済みます。治療後、肩の動きはすぐに改善し、当日の入院も必要ありません。
肩処置

サイレントマニュピレーションを受ける上での注意点は?

サイレントマニュピレーションを受けた後、麻酔の効果で5〜6時間は肩が動かしにくくなります。そのため、当日は車やバイク、自転車での来院は控え、公共交通機関や家族の送迎を利用するようにしてください。麻酔が切れた後は、特に制限なく肩を動かしても構いませんし、入浴も可能です。

サイレントマニュピレーションの注意点は?

サイレントマニュピレーションは、痛みが少なく、効果的な治療法ですが、いくつか注意点があります。

1.骨粗鬆症のある方や高齢者には不向き

骨粗鬆症がひどいと、骨折のリスクが高まるため、この治療法は行えません。特に70歳以上の方にはお勧めできません。

2.五十肩と正確に診断されているか

痛みの原因が、石灰沈着性腱板炎や腱板断裂などの場合は、サイレントマニュピレーションの効果は期待できません。

サイレントマニュピレーションの医学的根拠は?

サイレントマニュピレーションは、エビデンス(医学的な根拠)に基づいた治療法です。
 

  • ・ある論文では、172肩に対してサイレントマニュピレーションを行い、治療後すぐに痛みと可動域が改善したと報告されています。[1]
  • ・1610例のサイレントマニュピレーションを調査した研究では、肩の動きが改善し、大きな合併症は認められず、比較的安全な治療法と報告されています。[2]

五十肩でやってはいけないことは?

五十肩でやってはいけないこととして、バキバキ整体や悶絶整体など痛みを伴う施術は絶対に避けるべきです。このような施術は、かえって痛みを悪化させ、肩の動きをさらに悪くする可能性があります。
肩痛い

症状がひどい場合は?

症状がひどい場合、例えば、腱板断裂を伴う場合や、骨粗鬆症が著しい場合、骨折後の肩関節拘縮などでは、関節鏡下授動術が適応となることがあります。関節鏡下授動術は、小さなカメラと器具を用いて、関節内部の状態を確認しながら、炎症を起こして痛みの原因となる充血して腫れた滑膜(図 1)を切除して癒着した組織を剥がし、肩の動きを改善させる手術です。もし、あなたが、様々な治療法を試しても、五十肩の症状が改善しない場合は、一度専門医に相談することをお勧めします。

肩関節鏡図1 充血して腫れた滑膜

まとめ

五十肩は、日常生活に支障をきたす、つらい肩の痛みと動きの制限を伴う疾患です。このコラムでは、その最速の治療法として、サイレントマニュピレーションをご紹介しました。この治療法は、麻酔を用いて痛みを抑え、短時間で肩の可動域を改善させる効果が期待できます。ただし、全ての方に適応となるわけではなく、骨粗鬆症の程度が強い場合や、正確な診断が不可欠です。また、症状が著しい場合は、関節鏡下授動術が有効なケースもあります。五十肩の治療には、注射やリハビリ、体操など様々な方法がありますが、大切なのは、ご自身の状態を正確に把握し、専門医と相談しながら最適な治療法を選ぶことです。
もし、あなたが、五十肩の痛みで悩んでいるなら、ぜひ一度、肩専門医に相談してみてください。
エコー検査やMRI検査を行い、あなたの状態を正確に把握した上で、最適な治療法を提案してくれます。特に、サイレントマニュピレーションは、痛みを早く取り除き、日常生活を取り戻すための有効な手段です。当院では、より詳しい検査のためにMRI検査も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

MRI検査について

MRI
より詳細な検査をご希望の場合には、MRI検査が有効です。MRI検査では、レントゲンやエコーでは確認できない筋肉や靭帯の状態を詳しく調べることができます。これにより、より正確な診断と治療計画の作成につながります。このコラムが、あなたの肩の痛みを解消する一助となれば幸いです。ぜひ、勇気を出して一歩踏み出してみてください。痛みを取って笑顔と健康で明るく楽しい生活を過ごしましょう。

引用文献

  1. 皆川 洋至 MB Orthop. 25(11):93-98,2012.
  2. Park K, et al. Effect of manipulation technique using ultrasound-guided cervical nerve root block on range of motion at the shoulder joint in frozen shoulder: a retrospective study. J Exp Orthop. 2022 Jul 6;9(1):63.