中山クリニック

膝(ひざ)再生医療は効果なし?

掲載日:2024.05.20

————目次————
 

1.再生医療とは?
2.ひざの治療に特化した再生医療の種類
3.再生医療の適応
 ①変形性膝関節症
 ②急性または慢性の軟骨損傷
 ③関節リウマチ
4.再生医療の治療法と原理
 ①PRP(プレートレットリッチプラズマ)治療
 ②APS療法:自己抗炎症性タンパク質の注射
 ③幹細胞治療:脂肪由来及び滑膜由来幹細胞の活用
5.治療の効果が現れる期間と持続期間
 ①PRP療法:血小板豊富なプラズマを用いた治療
 ②APS療法:自己抗炎症性タンパク質の注射
 ③幹細胞治療:脂肪由来及び血液由来幹細胞の活用
6.再生医療のメリット
 ①損傷した組織の再生
 ②副作用のリスクが低い
 ③身体の負担が少ない(最小限の侵襲)
 ④持続的な治療効果
7.再生医療のデメリット
 ①高額な治療費
 ②治療の結果には個人差がある
 ③長期的な安全性と効果の不確実性
 ④規制と倫理的な問題
8.クリニックの選び方と治療への予約
9.治療後のリハビリと生活指導
10.治療費用と保険の適用
 ①保険適用はいつから?
 ②費用は?
11.治療のリスク
12.お金をかけて得られる効果(費用対効果と投資価値の評価)
13.まとめ

1.再生医療とは?

著作者:Freepik

再生医療は、体の傷んだ組織や臓器を修復して再生させる新しい医療技術の一つです。この治療法は、患者さん自身の血液や細胞を使用して行い、傷んだ関節の軟骨と周囲の組織が治るように環境を整えます。再生医療の目的は、単に痛みを緩和するだけではなく、損傷を受けた部位の機能を回復させることです。そのため、再生医療はどんどん悪くなる関節の病気や重度の軟骨損傷など、他の治療では治らないケースにおいて、新たな治療の選択肢となり、再生医療による膝の痛みの解消は、人生において画期的な変化をもたらします。膝の痛みに苦しんでいる多くの人々にとって、この治療法は単に痛みが緩和される以上の価値があり、新たな人生の希望と健康な日常への扉を開く鍵となります。

2.ひざの治療に特化した再生医療の種類


膝の再生医療には、血液を利用したPRP療法、APS療法や脂肪や滑膜、骨髄を培養して作成する幹細胞治療、などがあります。これらはそれぞれ再生に用いる材料が異なりますが、いずれも膝の痛みや機能障害を改善します。

3.再生医療の適応

膝の再生医療は、以下のような症状や状態に特に有効です。

1. 変形性膝関節症


軟骨の摩耗が進み、痛みや生活に支障をきたす状態。レントゲン検査にて軟骨の隙間がなくなるのが確認できます。再生医療は軟骨の一部の再生を助け、痛みを管理します。いわゆる年のせい、加齢の変化と言われる病気です。

2. 急性または慢性の軟骨損傷


スポーツ障害や事故により、軟骨が傷んだ状態。再生医療は損傷した軟骨の修復を促進し、関節の機能を改善します。MRIで関節の軟骨を評価します。

3. 関節リウマチ


自己免疫反応による関節の炎症。特定の再生医療技術は炎症を減らすことで痛みを和らげ、関節の損傷の進行を遅らせることができます。血液検査で診断し、関節リウマチの治療がまず必要になります。
 
これらの治療は、画像診断を行い、患者さんの具体的な症状やどのレベルまで日常生活を過ごしたいか、実際に診察してから治療方法を選択します。再生医療の適用可能性と治療計画については、専門の医師と十分な相談が必要です。

4.再生医療の治療法と原理

1. PRP(プレートレットリッチプラズマ)治療


患者さん自身の血液を遠心分離して得られる血小板濃縮プラズマを膝や患部に注入し、自然治癒力を高めます。血小板には成長因子が豊富に含まれており、炎症の軽減や組織の修復を促進します。白血球の割合が少ないPRPと白血球の多いPRPに分けられます。関節の炎症が軽くなることで膝の痛みが軽くなることが期待されます。

2. APS療法:自己抗炎症性タンパク質の注射


患者さん自身の血液から遠心分離を2回行い得られる血漿成分から、特定の抗炎症性タンパク質を抽出し、それを膝に注射します。このタンパク質は膝関節内の炎症を軽減し、痛みを和らげる効果があります。

3. 幹細胞治療:脂肪由来及び滑膜由来幹細胞の活用


脂肪組織や骨髄から採取した幹細胞を使用し、損傷した軟骨の再生を目指します。幹細胞は分化する能力を持ち、必要な細胞タイプに変化して組織の修復を助けることができます。

5.治療の効果が現れる期間と持続期間

1. PRP療法:血小板豊富なプラズマを用いた治療


効果は数週間から数ヶ月にわたって徐々に現れ、患者さんによっては治療を数回繰り返すことでより長期的な改善が見られます。

2. APS療法:自己抗炎症性タンパク質の注射


APS療法は特に関節炎による慢性的な痛みに効果的であり、数日から数週間で効果が現れることが多いです。効果の持続期間は数ヶ月から2年程度であり、痛みの症状が強い場合や再発した場合は、繰り返し治療を行うこともあります。当院では、1年ごとに繰り返して立ち仕事を継続されている方や3回注射を行って痛みが消失し重労働に復帰した方がおられます。

3. 幹細胞治療:脂肪由来及び血液由来幹細胞の活用


幹細胞は、損傷した膝の軟骨の修復と再生のために分化する能力を持っています。幹細胞は同時に、抗炎症性因子を放出し、炎症を抑えることで痛みを減少させる効果もあります。効果の現れる速度は個人差が大きいですが、治療後数ヶ月以内に改善が見られることが一般的です。持続期間も患者の状態や追加治療の有無によって異なりますが、適切なケースでは長期にわたる利益が期待できます。

6.再生医療のメリット

再生医療は、特に整形外科や皮膚科、心血管疾患の治療などで注目されている革新的な治療方法です。ここでは、そのメリットとデメリットを詳しく解説します。

1. 損傷した組織の再生

著作者:Freepik

再生医療の最大のメリットは、単に症状を抑えるのではなく、損傷した組織や臓器を実際に再生し、元の機能を回復させる可能性があることです。これにより、治療効果が長持ちし、患者の生活の質が大幅に向上する可能性があります。

2. 副作用のリスクが低い

自分の細胞を用いるため、他の治療方法と比較して拒絶反応(アレルギー反応)や重篤な副作用のリスクが格段に低くなります。これらの副作用は、手術や薬剤による治療では避けられないリスクになります。

3. 身体の負担が少ない(最小限の侵襲)

全身麻酔で入院して行う大掛かりな手術を避け、外来で注射や点滴による方法で治療が行えるため、患者さんの体への負担が少なく、回復期間が短くなります。入院は必要なく、短時間で終わるため、受けやすい治療になります。
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4. 持続的な治療効果

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再生医療は、治療効果が継続することが期待されます。もし適切に組織が再生されると、その効果が永続する可能性があり、治療を繰り返す必要がなくなる可能性もあります。

7.再生医療のデメリット

1. 高額な治療費

再生医療は技術が高度であり、専門的な設備と知識が必要です。そのため、治療費は高額なので、患者にとって経済的な負担が大きくなります。また、基本的に治療が保険適用外であるため、全額自己負担となることが一般的です。しかし、医療費控除 は適応になり、各種生命保険でも契約内容によって保険金が支給されることがあります。

2. 治療の結果には個人差がある


再生医療の効果は患者さんの年齢、健康状態、損傷の程度に大きく依存します。すべての患者に一貫した結果が得られるわけではなく、中には期待した改善が見られないケースもあります。ですので、治療を受けてみないと実際の効果はわかりません。まずは、立った状態での膝レントゲンとMRIによる画像診断を受けましょう。

3. 長期的な安全性と効果の不確実性

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再生医療は新しい治療法であり、特に新しい技術については長期的な安全性や効果に関するデータが限られています。今後、再生医療の普及に伴って、安全性や効果について長期成績が明らかになるでしょう。

4. 規制と倫理的な問題

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幹細胞など再生医療技術は、国による規制が厳しく、倫理的な問題が伴います。自分の脂肪細胞や血液を用いる場合は倫理的な問題はありませんが、人間の胚を使用する研究には厳しい規制があり、今後、世間で受け入れられるか大きな課題です。また再生医療を施行する施設は、厚生局に申請して、設備や体制、人員配置などが再生医療を行うのに適正であると認可を得た施設でないと行えない治療になります(当院は、再生医療の許可を得ております)。再生医療は将来、発展する可能性が非常に高い一方で、適用にあたっては慎重な判断が求められる分野です。

8.クリニックの選び方と治療への予約

ひざ再生医療を行うには、患者さんを診察して画像診断から再生医療が適応か診断する必要があります。関節注射やリハビリなどの保存治療はもちろん、関節鏡や人工関節置換術などの手術経験があり、変形性膝関節症、半月板損傷など膝疾患を含めて、診断と治療の経験が豊富な整形外科専門医が在籍しているクリニックを選ぶことが重要です。

9.治療後のリハビリと生活指導


治療後に膝の痛みが再発しないよう再生医療の治療が成功するためには、健康的な食生活、定期的な運動、適切な体重管理がとても重要です。これらは、再生された組織によって膝関節の健康を保って、痛みが再発しないように役立ちます。まず、ひざがグラグラしないよう(膝関節の安定性を強化するため)、膝の筋力を強くするエクササイズ、膝の柔軟性を維持するためのストレッチ、転倒しないようにバランス訓練を行うことが必要です。特に股関節の中殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングを強化すること、膝の動きが悪くならないよう可動域訓練を行うことを意識しましょう。自宅でできるリハビリとして、簡単なストレッチや筋力トレーニング、バランス運動があります。これらは普段の生活へ簡単に組み込むことができるので、習慣にしましょう。医師や理学療法士は、患者さんの状態に応じて適切なエクササイズと生活習慣を指導し、必要に応じで管理栄養士による栄養指導で適切な体重管理を行います。

10.治療費用と保険の適用

1. 保険適用はいつから?

ひざ関節で保健適応であるのは、2013年4月1日に認可された外傷性軟骨欠損症、または離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)に対する 自家培養軟骨移植治療 です。変形性膝関節症は適応外ですので、中高齢者の膝の痛みに対する再生医療は全額自費診療となります。しかし、医療費控除 は適応になり、生命保険でも契約内容ではカバーされていることがあります。

2. 費用は?

PRP療法では、関節内に投与する場合、22万~40万円、APS療法では33万~75万円、脂肪幹細胞移植なら100万~400万が一般的です。施設によって、消費税含まない場合、診察費用、注射回数、診察回数、画像診断などが異なりますので、詳細については各医療機関に直接、お問い合わせしましょう。

11. 治療のリスク

再生医療は、患者さん自身の細胞を用いる治療なので、アレルギー反応などのリスクは基本的にありません。現在、本治療で重篤な副作用は確認されていませんが、医療行為であるため、感染症や採血時の痛みなど、一般的な処置に伴うリスクはありえます。改善が見られない場合や時間とともに痛みが再発した場合は、再生医療を繰り返して行うことが可能です。また、再生医療を行ってから関節鏡による治療や人工関節置換術を行うことも可能です。

12. お金をかけて得られる効果(費用対効果と投資価値の評価)

高額な治療ですが、日常生活で痛みがなくなり、将来的に健康な膝であり続ける事を考えると、投資価値は高いと言えるでしょう。自動車や家電製品は必ず買い替えが必要ですが、自分の身体は一生付き合うものですから。では、どのような未来になるのでしょうか?
 
まず、再生医療によって膝の痛みが解消されたことで、普段の生活の質が劇的に良くなります。これまで膝の痛みを理由に諦めていた散歩やハイキング、さらにはジョギングといった活動が、痛みを感じることなく楽しめるようになるのです。朝の爽やかな空気を感じながらの散歩は、心や身体の健康はもちろん、一日の生きる活力をもたらします。
 

次に、家族や友人との関係もより豊かなものになります。膝の痛みで参加をためらっていた家族旅行やイベントにも積極的に参加できるようになるため、大切な人との絆を深める機会が増えます。子供や孫との遊びも全力で楽しむことができ、家族の中での自分の役割がよりアクティブで中心的なものに変わるでしょう。
 
また、再生医療の効果は、職業生活にも大きな影響があります。膝の痛みがなくなることで、仕事の効率が向上し、長時間立っての作業や移動が必要な仕事も苦痛ではなくなります。これにより、諦めていた仕事の選択肢が広がり、より充実した職業生活を送ることが可能になるのです。
 

趣味の世界でも、新たな扉が開きます。ガーデニング、ダンス、スポーツといった、膝が健康でなければできない活動に挑戦することができます。これまで痛みによって避けていた活動を楽しむことで、新しい友人を作る機会も増え、社会とのつながりが強まることでしょう。
 
さらに、心の健康にも良い影響を与えます。痛みという常に付きまとうストレスから解放されることで、日々の生活がより明るく前向きなものになります。精神的な余裕も生まれ、自分がやりたい、挑戦したい新たな目標に向かって前向きに努力することができるようになるでしょう。
 

最後に、再生医療による治療は、健康になります。痛みなく曲がる膝によって、動けることで身体のバランスを整え、生活習慣病や認知症、その他加齢による疾患の発症予防にもつながります。
 
こうして、再生医療によって膝の痛みが取れることは、単に身体的な苦痛からの解放だけではなく、人生の質を根本から変える力を持っています。新たな希望と活動の機会が広がる中で、人生の第二の春を謳歌することができるのです。再生医療は、ただの医療技術ではなく、多くの人々にとっての新たな人生の始まりを意味するものなのです。

13. まとめ


再生医療技術は、従来の治療法であるステロイド注射や手術と比較して、より自然な治癒のプロセスを促し、副作用が少ないという利点があります。しかし、治療が成功するかどうかは個々の患者の症状、体の反応に大きく依存するため、治療前の詳細な診断と医師との相談が不可欠です。まずは再生医療の治療が適応になるか、画像診断による評価を行い、整形外科専門医の診察を受けましょう。
 
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膝関節の症例について
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