中山クリニック

肩がゴリゴリ音がする!何が原因?

掲載日:2024.08.20

肩を動かした時にゴリゴリ音がする事はありませんか?痛みが全くなくても音がすることがある、痛みはないけど違和感を感じる時がある、動かす姿勢によって痛みが出る、たまに激痛が走る、など様々な症状を外来診察ではお見かけします。今回はたくさんの患者さんが訴えていた「肩がゴリゴリなる」という症状について、その原因、診断方法、そして治療方法を分かりやすく解説します。

————目次————
1.肩を構成する骨
2.肩がゴリゴリと音がする原因は?
3.どうやって原因を見つけるの?
4.どうすれば良くなるの?
5.まとめ
6.参考文献

肩のしくみ

みなさんは普段、肩を使って腕を動かしたり、重いものを持ち上げたりしていますね。でも、肩がどんな仕組みになっているか考えたことはありますか?ゴリゴリ音の謎を解くために、肩の構造について簡単に説明していきます。

肩を構成する骨


肩は主に3つの骨で構成されています

  1. 肩甲骨:背中にある平たい三角形の骨
  2. 上腕骨:腕の一番上にある長い骨(二の腕)
  3. 鎖骨:首の下から肩にかけて横に伸びている骨

これらの骨が連動して動くことで、私たちは腕を自由に動かすことができるのです。

肩関節

上腕骨の一番上にある丸い部分を上腕骨頭と呼びます。この部分が肩甲骨にある浅いお皿のような部分(関節窩)にはまり込んで、肩関節を形成しています。骨と骨の接触が少なく、とても不安定な構造のため肩関節は人間の身体で最も脱臼しやすい関節ですが、この不安定な構造のおかげで肩関節は動かす範囲が最大の関節となっており、腕を色々な方向に大きく動かすことができるのです。肩甲骨と鎖骨は肩鎖関節で連結されています。

肩甲骨と肋骨

肋骨は胸の周りを囲む骨で、肩甲骨の下にあります。肩甲骨はスケートボードのように肋骨の上を滑るように動きます。これにより、腕を動かすときに肩甲骨も一緒に動くことができるのです。

筋肉と腱の役割

肩の動きを支える重要な役割を果たしているのが、筋肉です。
腱板:肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉とその腱からなる構造です。腕を持ち上げたり回したりするのを助け、肩を安定化させる役割もあります。上腕骨と肩甲骨の一部である肩峰という骨の間にあります。50歳以上になると、腱板が古いゴムのように弾力性がなくなり、骨と骨の間で引っかかたり、傷ついて断裂することがあります。

肩甲骨と肋骨の間の筋肉:これらの筋肉は肩甲骨を安定させ、スムーズな動きを可能にします。例えば、小胸筋前鋸筋などがあります。姿勢が悪くなると肩甲骨が前に傾き、筋肉が引っかりやすくなります。

肩がゴリゴリと音がする原因は?


肩がゴリゴリなる現象は、医学用語では「肩関節のクレピタス(音)」や「スナッピング・スカプラ症候群」(引っかかる肩甲骨)と呼ばれています。主な原因には次のようなものがあります。

  1. 腱の炎症や緊張: 肩の周りの筋肉や腱が固くなると、スムーズな動きにならず、音が出ることがあります(1)。肩関節の中で腱板が炎症を起こすと、骨と骨の間にある滑膜や肩甲骨、鎖骨とこすれ合って音が出ることがあります(2)。カルシウム(石灰)が沈着して腱が硬くなると骨に引っかかり、ゴリゴリ音が強くなります。また腱板が切れた場合(腱板断裂)は、切れた腱板の端っこが硬くなり、肩を上げようとすると肩甲骨に当たって音がして痛みが出ることがあります。また肩関節外では、僧帽筋が年齢とともに硬くなって腕を動かした時に引っかかるような違和感を感じることがあります。
  2. 関節の不安定: 肩の関節がグラグラして安定していないと、骨と骨がずれて音が出ることがあります(3)。肩が抜けたり(肩関節脱臼)、外れそうになったり(肩関節亜脱臼)する場合は、関節の中が傷んでいることがあります。生まれつき関節が柔らかく、意識的に肩を亜脱臼させてゴリゴリと音がすることがあります。また怪我や転倒することで鎖骨と肩甲骨を連結させている関節が外れることもあります(肩鎖関節脱臼)。
  3. 関節の変形: 60歳以上になると、関節のクッション(軟骨)がすり減って、上腕骨と肩甲骨がこすれ合い、軋むような音が出ることがあります(4)。体重がかかる関節である下肢の膝や股と比べると頻度は少ないですが、重労働やバレーボール、ラグビーなど肩に負担のかかる運動やスポーツを行う人に見られます。医学用語では変形性関節症と表現されます。骨や軟骨が剥がれて遊離体(関節鼠:ねずみ)になると、痛みが強くなることがあります。また急に腕を動かすと、関節の中にある水(関節液)からガス(主に窒素)が発生した時にボキッやバキッと音が鳴ります。指や首をいきなり動かすと音が鳴るのと同じ原理ですね。普通は、痛みもなく体に無害です。
  4. 肩甲骨と肋骨の間の筋肉や軟部組織の異常: 肩を動かしたときに背中の上あたりで「ゴリゴリ」音がする現象は、「スナッピング・スカプラ症候群」(snapping scapula syndrome)と言われます。これは、肩甲骨と肋骨、あるいは肩甲骨の周囲の筋肉や腱が摩擦や衝突することで生じる音や感覚を伴います。背中の上の方に、肩甲骨と肋骨があります。この2つの骨の間には、筋肉、滑液包があります。筋肉は、肩甲下筋(けんこうかきん)や前鋸筋(ぜんきょきん)という筋肉です。これらは、腕を動かすときに重要な役割をします。次に、滑液包(かつえきぶ)というクッションのような部分があります。これは、骨と筋肉の間で摩擦を減らす役割をしています。時々、これらの部分に問題が起きることがあります。筋肉が腫れたり(炎症)、筋肉が厚くなったり(肥厚)、滑液包に水がたまったり(滑液包炎)こういったことが起こると、肩甲骨を動かすときに、周りの部分とこすれ合ってしまいます。その結果、ゴリゴリという音が聞こえたり、ゴリゴリした感じがしたりすることがあるんです。特に、滑液包に水がたまる「滑液包炎」は、このゴリゴリする症状の原因としてよく見られます。

診断:どうやって原因を見つけるの?

肩がゴリゴリとなる原因を見つけるには、医師による診断が必要です。診断には次のような方法があります。

  1. 問診: いつから症状が始まったか、どんな動きをすると音がするかなどを詳しく聞きます。
  2. 触診: 医師が肩を押さえて痛みがあるかどうか、腕を動かして肩の動く範囲やゴリゴリ音が現れる位置や方向、痛みが出るかなどの症状を確認します。
  3. 画像検査:
    • レントゲン: 上腕骨(二の腕)と肩甲骨の形や位置を確認します。変形が進むと骨に棘ができたり、関節の隙間が狭くなります。
    • MRI: 筋肉や腱の状態を詳しく調べます。肩の周りに水が溜まっていないか、腱(腱板や上腕二頭筋腱)が切れていないか、上腕骨と肩甲骨の間にある軟骨や関節を安定させる組織(関節唇)の状態がわかります。非常に診断能力が高い検査です。
    • 超音波: 肩を動かしながらリアルタイムで腱や筋肉の動きが見えます。筋(腱板断裂)や水が溜まっていないかも確認できます。とても早く簡単に検査ができます。

これらの検査を組み合わせて、症状の原因を正確に見つけ出します。

治療:どうすれば良くなるの?


肩のゴリゴリ音自体は必ずしも危険なサインではありません。しかし、痛みを伴う場合は治療が必要です。治療方法には以下のようなものがあります。

  1. ストレッチと運動: 肩の周りの筋肉をストレッチして適切な運動をすることで症状が良くなることがあります。
  2. 姿勢の改善: 猫背にならない、肩を丸めない、背筋を伸ばすなど、正しい姿勢を心がけることで肩への負担が減り、症状が改善する可能性があります(5)
  3. 冷やす・温める: 炎症がある場合は冷やし、筋肉の血流が悪い場合は温めると効果的です。
  4. 消炎鎮痛薬: 痛みや炎症が強い場合に使うことがあります。
  5. リハビリテーション: 理学療法士による正しい肩の動かし方や運動指導が非常に有効です。
  6. ブロック注射: 滑液包や関節で炎症が起こっている場合は、ステロイド注射やハイドロリリースを行います。エコー下に行うと正確に患部へブロック注射が行えます。
  7. 手術治療: 腱板断裂や石灰沈着した滑膜炎や腱板炎、関節遊離体の場合は皮膚を少し切るだけの治療(関節鏡)で改善します。関節の変形が強い場合や腱板が広い範囲で断裂して変性した場合は、人工肩関節置換術が適応になります。

まとめ


肩がゴリゴリとなる原因はいろいろありますが、適切な診断と治療で良くなることが期待できます。日頃から姿勢に気をつけ、ストレッチをすることで肩の健康を保つことができます。症状が気になる場合は、早めに整形外科専門医に相談することをおすすめします。
中山クリニックでは経験豊富な専門医の診察を行っています。整形外科は各診察室にエコーが常備されており、MRIによる診断も可能です。肩の痛みでお困りの患者さんはいつでもご相談ください。

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参考文献

  1. Katzman, W. B., et al. (2016). Changes in flexed posture, musculoskeletal impairments, and physical performance after group exercise in community-dwelling older women. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 97(9), 1395-1402.
  2. Seitz, A. L., et al. (2011). Mechanisms of rotator cuff tendinopathy: Intrinsic, extrinsic, or both? Clinical Biomechanics, 26(1), 1-12.
  3. Jaggi, A., & Lambert, S. (2010). Rehabilitation for shoulder instability. British Journal of Sports Medicine, 44(5), 333-340.
  4. Millett, P. J., et al. (2009). Shoulder osteoarthritis: diagnosis and management. American Family Physician, 80(6), 605-611.
  5. Page, P. (2011). Shoulder muscle imbalance and subacromial impingement syndrome in overhead athletes. International Journal of Sports Physical Therapy, 6(1), 51-58.