膝 (ひざ) に水がたまる ! どうすればいい?
掲載日:2024.04.02
はじめに
膝に水がたまる状態は、多くの方が経験する一般的な症状ですが、原因はさまざまで正しい診断と治療が必要です。本コラムでは、膝に水がたまる原因、診断方法、および治療法についてわかりやすく解説します。
1.膝に水がたまるとは?
2.何が原因
3.症状は?
4.診断方法
①問診と診察所見
②画像診断
③関節穿刺
5.治療法
①保存的治療
②運動器リハビリテーション
③関節液の除去
④ヒアルロン酸
⑤手術
⑥再生医療
6.予防としてできること
7.まとめ
1.膝に水がたまるとは?
膝に水がたまる状態を「膝関節液貯留」または「膝滑液包炎」と呼びます。膝関節内には、関節をスムーズに動かすための正常でも少量の水 (滑液) が存在します。しかし、捻挫や打撲などのケガや炎症によってこの滑液が過剰に分泌されると、膝に水がたまる状態が発生します(関節水腫といいます) 。
2.何が原因?
膝に水がたまる主な原因は、以下の通りです。
① ケガ(打撲、捻挫、半月板損傷、靭帯損傷)
② 関節炎(変形性関節炎、リウマチ性関節炎、痛風、偽痛風など)
③ 感染症(虫歯や汚れたキズからの細菌感染)
④ 過剰な運動や負荷(重たい荷物を持っての山登りやマラソン)
3. 症状は?
膝に水がたまると、ズボンの着脱がしにくくなったり、階段の昇り降りや歩く時に痛みを感じるなど、普段と違う膝の腫れと痛みに気づきます。また正座が出来なくなった、ひざが伸びない、ひざが曲がらない、など膝の動きが制限されます。
4. 診断方法
膝に水がたまる原因を特定するためには、以下のような診断過程となります。
① 問診と診察所見
いつから、どのようにして症状が起こったか、発生した状況、運動習慣、仕事内容など問診で確認します。ひざを触診して熱感や腫れているか、水がたまっているかを確認します。膝の表や側方だけでなく、膝の裏に水がたまることもあります。膝の動く範囲や曲げ伸ばしで痛みが誘発されるか、膝を押さえて痛みの場所がどこにあるか、を詳細に確認します。
② 画像診断
X線検査で骨の異常を、MRI検査で軟組織の異常を確認します。特に、MRIは膝の構造(水がたまる場所はもちろん、軟骨や靭帯、半月板、骨の内部、皮下まで)を詳細に視覚化できるため、膝に水がたまる原因を特定する上で非常に有効です。水がたまっているか、いないか、をすぐに確認する方法としてエコー検査も有用です。
③ 関節穿刺
痛みが非常に強い場合や膝に大量に水がたまる場合、なかなか腫れが引かない場合は、関節の水を抜いて検査します。細菌による感染や痛風、偽痛風は関節液の検査で確定診断となります。
5.治療法
膝に水がたまる原因に応じて、以下の治療法が選択されます。
① 保存的治療
安静、冷却、圧迫、挙上などケガした時と同じように対応します。痛み止めや外用剤など抗炎症薬の使用が含まれます。
② 運動器リハビリテーション
ストレッチによりひざの柔軟性を取り戻し、関節に負担のかからない適切な運動により、膝周りの筋力を強化し、関節の安定性を高めます。
③ 関節液の除去
膝の曲げ伸ばしが制限されている場合は、膝から過剰な液体を抜くために、関節穿刺を行うことがあります。膝の裏に水がたまる場合は、エコーで神経や血管をよけて水を抜くことができます。
④ ヒアルロン酸
変形性膝関節症や関節リウマチが原因で水がたまる場合は、痛みの軽減と膝の動きをよくさせるために、膝の関節内に軟骨の潤滑油としてヒアルロン酸注射を行うことがあります。機械のエンジンオイルのような役割ですね。この治療は日本国内で保険適用となっています。ただし、ヒアルロン酸の内服治療は全く効果ありません。
⑤ 手術
原因によっては、関節鏡手術や切開手術が必要になることもあります。細菌感染の場合は骨が溶けて関節破壊が進行するので早急に手術が必要になります。関節リウマチが原因の場合は、滑膜によって軟骨や骨が浸食されるので関節リウマチの治療が必要になります。いずれも内視鏡による治療は筋肉や腱を切らないので侵襲が少ない治療になります。
⑥ 再生医療
変形性関節症や半月板損傷による痛みや膝に水がたまる場合は、有効な治療の選択肢になります。
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6.予防としてできること
膝に水がたまる状態を予防するためには、適度な運動による筋力の維持と適切な体重管理、運動時に膝へ負担のかからないサポーターやクッション性のある靴の使用、運動前後のストレッチが有用です。
7.まとめ
膝に水がたまる状態は、さまざまな原因によって引き起こされます。正しい診断と適切な治療を行うことで、症状の改善が期待できます。自分のひざに違和感があり、水がたまった感じがするようであれば、早期に整形外科専門医に相談することをお勧めします。このコラムが、膝に水がたまる症状に悩む方々にとって、有用な情報を提供し、健やかな日常生活への一助となれば幸いです。
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