中山クリニック

足の裏・かかと(踵)の痛みを解消する方法!

掲載日:2024.09.09

足の裏のかかとが痛くなったことはありませんか?30歳を過ぎると、ランニングや立ち仕事が長時間続くと足の裏全体が痛くなったり、踵が痛くなったりします。外来でとても多くの患者さんが訴える「足の裏の痛み」について、その原因と医学的根拠のある治療法について解説します。

————目次————
1.足底腱膜炎と足底筋膜炎の違い
2.足底腱膜炎の症状と原因
3.足底腱膜炎の診断
4.足底腱膜炎の治療
5.自宅で行うセルフケア
6.よくある質問
7.まとめ
8.参考文献

足底腱膜炎と足底筋膜炎の違い


足の裏に痛みを感じる主な原因として、「足底腱膜炎」と「足底筋膜炎」があります。これらは実際には同じ病態です(1)。足の裏にある足底腱膜というしっかりとした厚い組織に炎症が起きて痛みが出る病気で、日本足の外科学会は、「足底腱膜炎」という呼称を正式に決定しましたが、保険病名では「足底筋膜炎」でないと体外衝撃波治療の適応にならないので、どちらの病名も使用されています。このコラムでは、学会が認定した名称の足底腱膜炎として、説明します。

足底腱膜炎の症状と原因

症状

  • ・かかとの内側に押さえると痛みがある
  • ・朝起きて最初の一歩を踏み出したときや動き始めた時に、かかとに鋭い痛みを感じる
  • ・長時間立ち続けたり歩いたりすると痛みが強くなる

足底腱膜炎の原因

  1. 使いすぎ:長時間のランニングや立ち仕事、スポーツ
  2. 体重増加:急激な体重増加は足への負担を増やします
  3. 不適切な靴:サポートが不十分な靴を長時間履くこと
  4. 足の構造:扁平足や高アーチの人は発症しやすい
  5. 加齢:年齢とともに足底腱膜やアキレス腱の弾力性が低下する

実際に診察していると、趣味でマラソンされているランナーや底が鉄板である安全靴やアーチサポートのない長靴を履いて長時間の立ち仕事をされる人、運動をせず若い時と比べて体重が20kg以上増えた中年の女性によく見られます。スポーツでは、ウォーキング(71.8%)、ジョギング(14%)が大半を占め、サッカー、野球、ハンドボールなど球技(7.3%)、自転車(6%)という報告があります(2)。また、足底腱膜炎は、かかとや足がしびれることはありません。かかとがしびれる場合は、足根管症候群腰部脊柱管狭窄症など他の病気を考えましょう。

足底腱膜炎の診断

  1. 問診:症状、職業やスポーツなど生活習慣について詳しく聞きます
  2. 触診:足の裏を触って痛みのある場所を確認します
  3. レントゲン検査:腱の石灰化や骨の状態を確認し、骨棘(こつきょく)の有無を調べます
    骨棘:かかとの骨に出来る小さな突起で、足底腱膜炎が長引くとよく見られます)
  4. エコー検査(超音波画像診断装置):足底腱膜の厚さや炎症、骨棘がとても詳しく観察できます
  5. MRI:足底腱膜の炎症や踵骨の疲労骨折、炎症を確認します

足底腱膜炎の治療


足底腱膜炎の治療には、色々と方法があります。症状の程度に応じて、適切な治療法を選びます。決して治らない病気ではないので、年のせいにせず、あきらめないで下さいね。

  1. 薬物療法
    湿布:消炎鎮痛剤を含んでいるので痛い場所を中心に貼ります。入浴後に貼ると吸収されやすくなります
    内服薬:日常生活に困る痛みがある場合、炎症を抑える薬を飲むこともあります
  2. ブロック注射
    痛みのある足底腱膜へ痛み止めや炎症を抑えるステロイドを注射します 痛みが強くて日常生活にも困る場合に行いますが、頻回に注射すると足底腱膜が変性して断裂する危険があります
  3. リハビリテーション
    ・理学療法士の指導下に足関節の可動域訓練、ふくらはぎやアキレス腱のストレッチを行います
    ・足部のアーチ機能を強化するための筋力訓練や足趾のタオルつかみ運動を指導します
  4. インソール(中敷き)療法
    足に合わせたクッション性のある中敷きを使用して、足への負担を軽減します
  5. 体外衝撃波治療
    音波のエネルギーを使って、変性した神経の痛みを取り、痛みのある部分の血流を改善し、治癒を促進する治療法です。収束型と拡散型があり、効果が確認されて保険診療で認められているのは収束型の治療です。足底腱膜炎の痛みが軽減し、機能改善に有意な改善を認めると報告されています(3)
    ・効果:多くの患者さんで症状改善が見られますが、効果がない場合もあります
    ・デメリット:治療中に痛みを感じることがあります
    ・費用:保険適用のため、1割負担なら5000円、3割負担なら15000円です。ただし6ヶ月間の保存治療を行なっても痛みが続く難治性足底筋膜炎足底腱膜炎)の場合に保険適応になります。
  6. 再生医療(PRP療法)
    自分の血液から取り出した血小板を濃縮し、痛みのある足底腱膜に直接、注射する新しい治療法です。傷んだ足底腱膜の修復と再生を促す治療で、筋肉と腱の付着部は血流が少ないので非常に有効な治療です(4)。アレルギーなどの副作用がなく、早期のスポーツ復帰や仕事復帰が期待できます。
  7. 手術治療
    紹介した以上の治療を行なっても痛みが続く場合は、手術も選択肢になります。従来は足底を切って足底腱膜を踵骨の付着部で切除して骨棘も削る手術が主流でした。最近は、内視鏡を用いて、皮膚を2箇所少しだけ切り、足底腱膜の部分切除や踵骨の骨棘を切除する治療があります。

自宅で行うセルフケア

これから紹介するストレッチを8週間続けると、明らかに痛みや機能改善する報告があります(5)

タオルストレッチ

  1. 床に座り、足を前に伸ばします
  2. タオルを足の裏に巻き付け、両端を手で持ちます
  3. タオルを引っ張って、つま先を自分の方向にゆっくり倒します
  4. 15秒間保持し、ゆっくり戻します

壁押しストレッチ

  1. 壁の前に立ち、両手を壁につけます
  2. 片方の足を後ろに下げ、かかとをしっかり床につけます
  3. 前の足の膝を曲げながら、後ろの足の筋肉を伸ばします
  4. 15秒間保持し、ゆっくり戻します

階段ストレッチ

  1. 階段の端に立ち、かかとを階段の端に乗せます
  2. ゆっくりかかとを下げ、続いてかかとを上げ、ふくらはぎと足底をリズム良く伸ばします
  3. 20秒間保持し、ゆっくり戻します

 
注意:痛みを感じたら無理をせず、すぐに中止してください。

よくある質問

Q1: 足底腱膜炎は完治しないのですか?

A1: 適切な治療と生活習慣の改善で、多くの場合は症状が改善します。ただし、完治までに時間がかかることがあります。

Q2: ランニングを続けても大丈夫ですか?

A2: 症状が軽い場合は、医師と相談しながら続けることができます。ただし、痛みが強い場合は休息が必要です。

Q3: しびれを感じることがありますが、これも足底腱膜炎の症状ですか?

A3: しびれは足底腱膜炎の症状ではなく、他の病気の可能性もあるので、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。

Q4: 体外衝撃波治療のデメリットは何ですか?

A4: 治療中に一時的な痛みを感じることがあります。その他、皮膚が赤くなる、点状出血、などの副作用が報告されていますが、当院では大きな合併症はなく、治療痛の一時的な痛みだけです。治療後は、運動制限や入浴制限など一切ありません。

Q5: マッサージは効果ありますか?

A5: 効果があるという治療法を比較検討した医学的根拠のある報告はありません。

まとめ


足底腱膜炎は、適切な治療と生活習慣の改善で良くなる病気です。痛みを感じたら我慢しないで早めに整形外科を受診しましょう。また、自分でストレッチと予防を心がけることで、健康な足を手に入れることができます。足の痛みに悩んでいる方は、ぜひお近くの整形外科専門医にご相談ください。健康で楽しく明るい生活を過ごしましょう!

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再生医療に興味のある方に、当院では無料カウンセリングを提供しています。

専門のスタッフが丁寧に説明し、個別相談を通じて最適な治療法をご提案します。APS療法や脂肪幹細胞移植について詳しくご案内し、ご希望に応じて画像診断の予約も承ります。

初診の患者様でもご利用いただけますので、お気軽にお申し込みください。

再生医療

参考文献

  1. Singh A, Zwirner J, Templer F, et al. On the morphological relations of the Achilles tendon and plantar fascia via the calcaneus: a cadaveric study. Sci Rep. 2021;11(1):5476.
  2. Alharbi AS, Alqahtani MS, Alhazmi OA, et al. The Prevalence and Risk Factors of Plantar Fasciitis Amongst the Population of Jazan. Cureus. 2022;14(10):e29434. Published 2022 Oct 1. doi:10.7759/cureus.29434
  3. Gollwitzer H, Saxena A, DiDomenico LA, Galli L, Bouché RT, Caminear DS, Fullem B, Vester JC, Horn C, Banke IJ, Burgkart R, Gerdesmeyer L. Clinically relevant effectiveness of focused extracorporeal shock wave therapy in the treatment of chronic plantar fasciitis: a randomized, controlled multicenter study. J Bone Joint Surg Am. 2015 May 6;97(9):701-8.
  4. Xing F, Xiang Z, Gao Y, Jiang Y, Tang H, Yi Y, Xu Z, Yin Z, Yin J, Gao J. Platelet-Rich Plasma Injection for Plantar Fasciitis: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Orthop J Sports Med. 2021 Sep 24;9(9)
  5. DiGiovanni BF, Nawoczenski DA, Lintal ME, Moore EA, Murray JC, Wilding GE, Baumhauer JF. Tissue-specific plantar fascia-stretching exercise enhances outcomes in patients with chronic heel pain. A prospective, randomized study. J Bone Joint Surg Am. 2003 Jul;85(7):1270-7.