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肩がズキズキ痛い…腱板断裂を放置するとどうなるの?!

掲載日:2024.11.19

最近、肩が痛くて夜も眠れない…」 「年のせいかな?」と思って放っておいていませんか? 実は、あなたの肩の痛みは、放置したままだと取り返しのつかない事態を招く危険があるのです。

今回は、50歳以上になるとたくさんの方が悩「肩の痛み」の中でも、特に注意が必要な肩の腱板断裂について、詳しく解説していきます。

————目次————
1.なぜ今、腱板断裂が注目されているの?
2.腱板って何?どうして断裂するの?
3.なぜ断裂するの?
4.こんな症状があったら要注意!
5.セルフチェック法
6.腱板断裂を放置するとどうなる?
7.最悪のシナリオ
8.早期発見・早期治療が大切!
9.まとめ
10.最後に
11.参考文献

なぜ今、腱板断裂が注目されているの?

腱板断裂の有病率

  • 50代:14.7%
  • 60代:21.5%
  • 70代:31.2%
  • 80代:32.6%

これは日本国内の研究ですが、腱板断裂はかなり高い有病率であるという報告[1]です。つまり、70歳を超えると3人に1人が肩の痛みに悩まされる可能性があるということです。さらに注目すべきは、「五十肩」と診断された方の約3分の1に実は腱板断裂が見つかっているという事実です。つまり、「年のせいだから」と諦めていた肩の痛みの中に、実は適切な治療が必要な腱板断裂が隠れているかもしれないのです。

腱板って何?どうして断裂するの?

腱板の基礎知識

腱板は、肩関節を囲む肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋という4つの筋肉の腱からなる重要な組織です。特徴的なのは、深層と浅層の2層構造になっているということ。この組織は、1.肩を動かす 2.腕を上げる 3.関節のクッション としての役割 という3つの重要な働きをしています。

断裂の種類

腱板断裂には、大きく分けて以下の種類があります。この診断は

部分断裂

  • ・浅層のみ、または深層のみが切れている状態
  • ・比較的軽度な段階

完全断裂

  • ・両方の層が切れている状態
  • ・断裂の大きさによってさらに4段階に分類

    小断裂(1cmまで)

    ファイル名

    中断裂(1-3cm)

    ファイル名

    大断裂(3-5cm)

    ファイル名

    広範囲断裂(5cm以上)

    ファイル名

なぜ断裂するの?

断裂の原因は大きく2つあります。

1. 急性の損傷

  • ・スポーツや事故、転倒など外傷による断裂
  • ・若い方や活動的な方に多い
  • ・痛みが強く、すぐに気付きやすい

2. 慢性の損傷(加齢による変性断裂)

  • ・年齢とともに少しずつ進行
  • ・50代以降に多い
  • ・気付きにくく、放置されやすい

こんな症状があったら要注意!

医師が忠告
腱板断裂の代表的な症状は次のとおりです。夜間痛や動作時の痛みは五十肩にとても似た症状になりますね。

夜間痛み

断裂した腱板が炎症を起こして、周りの組織にも炎症が広がって滑膜という関節を包む袋が炎症を起こします。健常な滑膜は関節をスムーズに動かす役割があるのですが、滑膜が炎症を起こして滑膜炎という状態になると、肩は動きにくくなり安静時でもズキズキと痛みが続くようになります。

  • ・横向きに寝られないほどの痛み
  • ・夜中に痛みで目が覚める

動作時の痛み

腱板は上腕骨と肩峰という骨の間で挟み込まれています。正常な腱板は、肩を動かすときに骨と骨の間を滑るように動いていますが、腱板が断裂すると、切れた断端がモップ状に広がって硬くなります。そうすると、肩を動かすたびに骨と骨の間でゴリゴリと鳴って引っ掛かるような痛みを感じます。この状態をインピンジメント症候群ともいいます。

  • ・腕が上がりにくい
  • ・特に横から腕を上げる動作が困難
  • ・運転席から駐車券を取る時の痛み
  • ・宴会でビールを注ぐ時の痛み

力の低下

  • ・ペットボトルのふたが開けづらい
  • ・物を持ち上げる力が弱くなった
  • ・運転席から駐車券を取りにくくなった

セルフチェック法

自分で確認できる簡単な腱板断裂テストをご紹介します
 

  1. 腕を横から90度まで上げる
  2. そこからゆっくりと下ろしていく
  3. 途中で急に腕が下がったり、強い痛みを感じたら要注意

 
また、次の方法で腱板を直接、触って確認することもできます
 

  1. ポケットに手を入れるような姿勢をとる
  2. 鎖骨から外側に触っていき、肩峰(肩の先端の骨)を見つける
  3. そこから前に指をずらすと、上腕骨頭の丸みを感じる
  4. 正常な場合は弾力性があり、断裂している場合はくぼみやグシュグシュした感触がある

腱板断裂を放置するとどうなる?

残念ながら切れた腱板が自然に治ることはありません。腱板断裂を放置すると時間とともに断裂が拡大する傾向があることがわかっています。例えば、腱板断裂をそのまま治療せずに経過を見ていると、3年後にはなんと全体の61%で断裂が大きくなり、部分断裂も約30%が完全断裂になったと報告されています[2]。また、他の研究[3]では腱板断裂を放置すると18ヶ月までは全体の約19%が断裂が大きくなりますが、18ヶ月を超えると48%つまりほぼ半分以上は断裂が大きくなり、特に全層断裂つまり完全断裂は、部分断裂よりも進行が早いと報告されています。

  • ・3年後には61%で断裂が拡大
  • ・部分断裂の約30%が完全断裂に進行
  • ・18ヶ月を超えると48%(約半数)で断裂が拡大

最悪のシナリオ

やってはいけない
放置を続けると、次のような段階を経て症状が進行します

1. 断裂の拡大

  • ・小さな断裂が徐々に広がっていく
  • ・痛みが増強

2. 筋肉の衰え

  • ・腱板の筋肉が萎縮
  • ・肩の機能が低下

3. 関節の変形

  • ・クッションの役割が失われる
  • ・骨と骨が直接当たり、摩耗が進む

4. 最終段階(腱板断裂性関節症)

  • ・腕が上がらなくなる
  • ・人工関節置換術しか選択肢がなくなる

早期発見・早期治療が大切!

腱板断裂は、診断されてすぐに適切な治療を行えば、多くの場合、症状の改善が期待できます。しかし、放置すると取り返しのつかない事態を招く危険性があります。

まとめ

院長先生

1. 50代以降の肩の痛みは要注意

  • ・特に夜間痛がある場合は腱板断裂を疑う

2. 腱板は肩の重要な組織

  • ・運動や加齢で断裂する可能性がある
  • ・若い方は特にスポーツや力仕事に注意

3. セルフチェックで早期発見

  • ・腕の上げ下ろしテスト
  • ・触診による確認

4. 放置は危険

  • ・断裂の拡大
  • ・筋肉の萎縮
  • ・関節の変形
  • ・最悪の場合、人工関節が必要に
  • クッションがなくなった肩 リバース式人工肩関節

5. 早期の診断と治療が重要

  • ・症状があれば早めに受診を
  • ・適切な治療で改善が期待できる

最後に

肩の痛みでお悩みの方、特に夜間痛がある方は、決して放置せず、肩専門医の診察を受けることをお勧めします。
中山クリニック
兵庫県明石市の中山クリニックでは、整形外科の診察室に全て運動器エコーを設置しています。肩の痛みがあれば、即座にエコーで腱板の状態を確認でき、MRIでより詳細な診断を行って治療方針を決めます。リハビリやエコー下ブロック注射による保存治療、フルハイビジョンの関節鏡を用いた内視鏡手術、再生医療による治療も行っています。再生医療についてご興味のある方は、ぜひ無料カウンセリングをご利用ください。あなたの肩の軟骨を守り痛みを取って、笑顔と健康で明るい生活を過ごせるようなお手伝いをさせていただきます。

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再生医療に興味のある方に、当院では無料カウンセリングを提供しています。
専門のスタッフが丁寧に説明し、個別相談を通じて最適な治療法をご提案します。APS療法や脂肪幹細胞移植について詳しくご案内し、ご希望に応じて画像診断の予約も承ります。
初診の患者様でもご利用いただけますので、お気軽にお申し込みください。

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参考文献

  1. Yamamoto A, Takagishi K, Kobayashi T, Shitara H, Osawa T. Prevalence of symptomatic and asymptomatic rotator cuff tears in the general population: From mass-screening in one village. J Orthop. 2015;12(1):8-12.
  2. Kim YS, Kim SE, Bae SH, et al. Symptomatic Rotator Cuff Tear Progression: Conservatively Treated Patients Who Return With Continued Shoulder Pain. Arthroscopy. 2022;38(10):2981-2988.
  3. Maman E, Harris C, White L, Tomlinson G, Shashank M, Boynton E. Outcome of nonoperative treatment of symptomatic rotator cuff tears monitored by magnetic resonance imaging. J Bone Joint Surg Am. 2009;91(8):1898-1906.