————目次————
1．4人に1人が抱える膝の痛み
2．食事でアンチエイジング
3．医学的根拠に基づく！膝にいい食べ物5選
4．1：果物（特に柑橘類・ベリー類）
5．2：緑黄色野菜
6．3：青魚
7．4：オリーブオイル
8．5：全粒穀物
9．膝の軟骨再生と食事の関係
10．変形性膝関節症と食事療法
11．地中海式食事のすすめ
12．注意点と個別対応の必要性
13．まとめ

4人に1人が抱える膝の痛み

「階段を降りるのが怖い」「正座ができない」「散歩もしたくない」

膝の痛みでお悩みの方が、近年急増しています。実は、日本人の4人に1人が膝の痛みを自覚しているという調査結果が出ています。

関節の痛みは要支援者になる第1位の原因なんですね。さらに、この問題がもはや高齢者だけの悩みではないということです。デスクワークの増加やライフスタイルの変化により、若い世代でも膝の痛みを訴える人が増加傾向にあります。明石市の医師会が主催している市民健康フォーラムのアンケートでは、最も関心が高かったテーマが「膝痛・腰痛」でした。膝の痛みの主な原因として、変形性膝関節症が挙げられます。これは、年齢とともに膝の軟骨が徐々にすり減り、痛みやこわばりを引き起こす病気ですね。一度失われた軟骨を完全に元に戻すことは難しいですが、最近の報告では適切な栄養摂取によって軟骨の状態を改善できる可能性が示唆されています。

食事でアンチエイジング

近年の医学研究により、特定の食品に含まれる栄養素が、膝の軟骨再生や炎症の抑制に効果があることが明らかになってきました。軟骨の主成分であるヒアルロン酸の産生を促進したり、軟骨を守る働きのある食品を意識的に摂取することで、膝の健康を維持・改善できる可能性があるのです。

医学的根拠に基づく！膝にいい食べ物5選

１：果物（特に柑橘類・ベリー類） ～ビタミンCパワーで軟骨を守る～

ビタミンCは体内で生成したり貯蔵することができないので、食事に強い抗酸化作用があります。2007年に発表されたWangらの研究^[1]では、ビタミンCの摂取量と膝関節症をMRIで評価して、摂取量が多いと骨髄浮腫が有意に低下して膝の炎症を軽減することが証明されました。果物を摂取する具体的な量は1日100mg以上を目標としましょう。
　

• ●みかん2個分またはキウイ1個で1日の必要量を確保
• ●イチゴの3ヶ月継続摂取で膝の痛み軽減効果を確認
• ●ブルーベリーなどのベリー類に含まれるアントシアニンには強力な抗炎症作用
• ●ビタミンCは軟骨のコラーゲン形成に不可欠

　
ということが報告されています。世界保健機関（WHO）は、1日で合計で400gの果物と野菜の摂取を推奨しています。ビタミンCのサプリメントも有効ですが、1日2000mgまでの摂取が上限とされます。

２：緑黄色野菜 ～軟骨再生の強力なサポーター～

緑黄色野菜、特にほうれん草やブロッコリーには、軟骨の健康に欠かせないルテインとゼアキサンチンが豊富に含まれていますので、緑黄色野菜の摂取量が多い人ほど、軟骨欠損のリスクが低いことが明らか^[2]になりました。この理由として、
　

• ・酸化ストレスから軟骨を守る抗酸化作用
• ・軟骨細胞の機能を保つ軟骨代謝の調節作用
• ・炎症性サイトカインの産生を抑制して軟骨の炎症を軽減する作用

　
が挙げられます。

具体的な効果

• ・ルテインとゼアキサンチンにより、軟骨欠損リスクが29%低下
• ・ビタミンCによる軟骨コラーゲンの形成促進
• ・カロテノイドによる抗酸化作用
• ・食物繊維による全身の炎症抑制

　
摂取の目安は1日約200g（両手いっぱい）です。サラダやお浸し、温野菜など、様々な調理法で毎日の食事に取り入れることが推奨されています。

３：青魚 ～オメガ3脂肪酸で膝を守る～

サバやイワシなどの青魚に含まれるオメガ3脂肪酸は、膝の健康にとても重要な役割を果たします。中等度の変形性膝関節症である患者さんにクリルオイル4g（オメガ3脂肪酸）の摂取をすることで膝の痛みが大きく改善したという報告があります^[3]。オメガ3脂肪酸の摂取により：
　

• ・膝関節の炎症が抑制される
• ・軟骨の再生が促進される
• ・関節のこわばりが改善される
• ・膝の可動域が広がる

　
という結果が報告されています。
　
摂取の目安として、サバ1尾（約100-150g）、サーモンの切り身1切れ（約80-100g）、イワシ2-3尾（約100-150g）です。これらの魚を週に2-3回食べることで、クリルオイル4gに相当するEPAとDHAを摂取できる可能性があります。これらの魚が食べられない場合はサプリメントの服用でも代償できます。さらに、オメガ3脂肪酸に含まれるDHAやEPAには認知症予防効果もあることが確認されており、高齢者の健康維持にはとても重要な食材ですね。週2-3回の青魚摂取を目標にしましょう。

４：オリーブオイル ～地中海式食事の要、軟骨を守る黄金オイル～

オリーブオイルに含まれるポリフェノールには：
　

• ・強力な抗炎症作用で関節炎の症状を改善
• ・抗酸化作用
• ・オートファジー（細胞の自己修復機能）の増強
• ・軟骨保護効果で軟骨の変性を守ります

　
という作用があることが明らかになりました^[4]。

特にエクストラバージンオリーブオイルに含まれるオレオカンタールという化合物は、COX-1とCOX-2酵素の産生を抑制してイブプロフェンという痛み止めと同じような効果を示します。
　
そして特筆すべきは、オリーブオイルを日常的に使用しているイタリアやギリシャなど地中海地方出身の人間は、他のヨーロッパ諸国と比較して：
　

• 人工膝関節置換術の実施率が低い
• 変形性膝関節症の発症率が低い
• 平均寿命が長い

　
という報告^[5]があります。

5：全粒穀物 ～意外だけど間違いない！膝の救世主～

2022年の大規模研究^[6]により、全粒穀物の摂取と変形性膝関節症の発症リスクに明確な関連があることが判明しました。つまり白米ではなく玄米、小麦粉ではなく全粒粉パンなどの全粒穀物を積極的に摂取している人は：
　

1. 変形性膝関節症の発症リスクが34%低下
2. 膝関節の炎症マーカーが減少
3. 軟骨の状態が良好に保たれる

　
という結果が示されています。精白された白米や小麦粉と違って、全粒穀物は栄養価が高く食物繊維がたくさん含まれており、体の炎症を抑える効果があるのですね。また、ビタミンやミネラルも豊富で、体全体の健康にも良いです。

膝の軟骨再生と食事の関係

軟骨組織は、主にコラーゲンとヒアルロン酸で構成されています。これらの成分を体内で効率的に産生するために、以下の栄養素が重要です：
　

• ・ビタミンC：コラーゲン合成に不可欠
• ・タンパク質：軟骨の主要構成成分
• ・抗酸化物質：軟骨の劣化を防ぐ
• ・オメガ3脂肪酸：炎症を抑制
• ・ミネラル：軟骨の強度を維持

変形性膝関節症と食事療法

変形性膝関節症は、単なる加齢現象ではありません。適切な食事管理により、症状の進行を遅らせたり、改善したりすることが可能です。特に重要なのは：
　

• ・炎症を抑える作用のある食品の摂取
• ・軟骨を再生するのに必要な栄養素の摂取
• ・体重を管理するための適切な食事

　
になりますね。

地中海式食事のすすめ

前述の5つの食材に豆類を加えると、実は「地中海式食事」の特徴と一致しています。この食習慣は、
　

1. 炎症を抑制する
2. 軟骨を保護する
3. 全身の健康を維持する

　
という効果があることが証明されています。他にも要因があるかもしれませんが、地中海式の食事は膝に良い食事と推測されますね。

具体的な食事メニュー

・朝食：全粒粉パンまたは玄米 ・ベリー類 ・緑黄色野菜のスムージー

・昼食：サバ缶やイワシ缶 ・たっぷりの野菜サラダ（オリーブオイルドレッシング）

・夕食：玄米ごはん ・青魚の煮付けや焼き魚 ・温野菜（オリーブオイル使用）

注意点と個別対応の必要性

食習慣の改善は効果的ですが、以下の点に注意が必要です：
　

・個人の体質や健康状態による違い

・現在治療中の薬との組み合わせ（腎機能障害なら野菜や果物控えるなど）

・急激な食事改善は避ける

・体調不良の場合は必ず医師に相談

まとめ

今回、解説した膝の健康を守る食事のポイントは以下のとおりです。
　

1. 抗炎症作用のある食材を積極的に摂取
2. ビタミン、ミネラル、食物繊維をバランスよく
3. 継続的な摂取を心がける
4. 全粒穀物を主食に
5. 青魚を週2-3回摂取
6. オリーブオイルを調理油の主力に
7. 緑黄色野菜と果物を毎日摂取

　
膝は自分の脚で歩いて快適な生活を過ごすためにとても大事な関節です。これからは人生100年時代と言われています。軟骨を守って痛みをなくし、笑顔と健康で明るく楽しい生活を過ごしましょう。

明石市の中山クリニックでは、患者様一人一人の状態に合わせた栄養指導を行っています。食事記録の分析や、詳細な問診に基づいて、最適な食事プランを管理栄養士による栄養指導でわかりやすくご提案いたします。変形性膝関節症でお悩みの方や痩せたい方は、web予約から栄養指導を申し込みください。

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まとめ

1. Wang Y, et al. Effect of antioxidants on knee cartilage and bone in healthy, middle-aged subjects: a cross-sectional study. Arthritis Res Ther. 2007;9(4):R66.
2. Jin X, et al. Associations between diet quality and knee joint structures, symptoms, lower limb muscle strength, depressive symptoms, and quality of life in people with knee osteoarthritis. Clin Nutr. 2021;40(7):4594-4602.
3. Kagan I, et al. Krill oil improved osteoarthritic knee pain in adults with mild to moderate knee osteoarthritis: a 6-month multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Am J Clin Nutr. 2022;116(3):672-685.
4. Y, Pang KL. Therapeutic Effects of Olive and Its Derivatives on Osteoarthritis: From Bench to Bedside. Nutrients. 2017;9(10):1060.
5. Wang Y, et al. Reduced rates of primary joint replacement for osteoarthritis in Italian and Greek migrants to Australia: the Melbourne Collaborative Cohort Study. Arthritis Res Ther. 2009;11(3):R86.
6. Dai Z, et al. Whole grain consumption and risk of radiographic knee osteoarthritis. Rheumatology (Oxford). 2022;61(12):4748-4756.