手首のガングリオンとは?原因と治療、放置するとどうなる?
掲載日:2024.12.27
ガングリオンについてSNSなどで話題になっていますが、「手首にコブができた」「ガングリオンの中身は何?」といった疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、手首にできる最も一般的な良性腫瘍「ガングリオン」について、わかりやすく解説します。
1.ガングリオンとは?
2.ガングリオンができる原因とは?
3.自己処置の危険性
4.ガングリオンの診断方法
5.ガングリオンの治療法
6.放置した場合の経過
7.破砕療法(皮膚の上から押し潰す)は推奨されない
8.ガングリオンの予防と注意点
9.まとめ:ガングリオンのポイント
1.ガングリオンとは?
ガングリオンは、手や手首にできる袋状の良性腫瘍です。その特徴は以下の通りです:
・発生部位:手首の背側に多い(60~70%)
・構造:関節包や腱鞘から生じる袋
・内容物:黄色のゼリー状の粘液物質
・特性:無菌環境の関節と交通し、大きさは変動する
・触感:固いしこりとして触れる
ガングリオンの発生原因は明確ではありませんが、手首を頻繁に使う動作が関係していると考えられています。仕事やスポーツで手首を酷使する方に多く見られるのも特徴です。
2.ガングリオンができる原因とは?
現在の医学では、ガングリオンの原因は完全には解明されていません。しかし、関節包の小さな裂け目から関節液が漏れ出し、それが袋状に変性して嚢胞を形成するという説が有力です。このため、以下のようなケースで発生しやすいとされています:
・手首を繰り返し使う仕事(例えばタイピングや調理作業)
・スポーツ活動(テニスやバドミントンなど)
・過去の手首の怪我黄色のゼリー状の粘液物質
3.自己処置の危険性
ガングリオンを見つけると、「針を刺して中身を抜けば治るのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、この方法は非常に危険です。
なぜ危険なのか?
ガングリオンは関節包とつながっており、関節内部は無菌状態が保たれています。自己処置で針を刺すと、以下のリスクが生じます:
①細菌感染の可能性
外部の細菌が関節内に侵入すると、関節炎を引き起こす恐れがあります。
②感染症の重症化
一度感染すると治療が難しく、最悪の場合は緊急手術や入院が必要になることも。
医療機関での処置
専門の医療機関では、適切な消毒と滅菌環境のもとで処置が行われます。必要に応じてエコー検査を使い、血管や神経を避けて安全に治療する方法が取られるため、感染のリスクが最小限に抑えられます。
4.ガングリオンの診断方法
手首のしこりがガングリオンかどうかを確定するには、以下の画像検査が重要です:
エコー検査
●ガングリオンの大きさや内容物を観察
●関節包との交通を確認
●周囲の血管や神経の位置を把握
MRI検査
●内部構造を詳細に確認
●他の腫瘍(脂肪腫、アテローマ、悪性腫瘍など)との鑑別
●立体的に腫瘍の位置や周辺組織との関係を把握
これらの検査によって、適切な治療計画を立てることができます。
5.ガングリオンの治療法
①保存療法(経過観察)
●症状がない場合は、治療を行わず定期的な検査で経過を観察します。
●自然に消失する可能性がある(約40~58%が自然消退)。
②穿刺治療(内容物を抜く)
●手首が動かしにくい、痛みやしびれがあるなど症状がある場合や見た目が気になる場合は、針で内容物を抜く治療が行われます。
●エコーを使うことで神経や血管を避けて安全に行うことが可能です。
●再発することもありますが、症状が改善されるケースが多いです。
③手術
●症状があり、穿刺治療で改善しない場合や再発を繰り返す場合は手術を行います。
●手術は皮膚を大きく切開して摘出する方法と皮膚を少し切開して内視鏡(関節鏡)で行う方法があります。
●関節鏡手術では、再発率が低く、機能回復が早いので患者さん満足度が高いと報告[1],[2]されています。
6.放置した場合の経過
ガングリオンは、症状がない場合には放置しても問題ないことが多いです。最近の研究では、約半数が数ヶ月から数年で自然消失することが報告されています。
注意が必要な場合
以下の症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診してください:
●痛みやしびれがある
●腫瘍が急激に大きくなった
●手首が動かしづらい
●日常生活に支障が出る
特に、悪性腫瘍の可能性が否定できない場合には、専門医の診察を受けることが大切です。
7.破砕療法(皮膚の上から押し潰す)は推奨されない
昔から「聖書療法」として知られる破砕療法は、皮膚の上からガングリオンを押し潰す方法です。しかし、この方法は以下の理由で推奨されません:
●血管や軟部組織を傷つけるリスクがある
●効果が一時的で再発しやすい
●エビデンスが不十分
8.ガングリオンの予防と注意点
残念ながら、ガングリオンを予防する確立された方法はありません。しかし、以下の点に注意することでリスクを軽減できる可能性があります:
●手首に負担をかけすぎない
●無理な動作を避ける
●症状が現れたら早めに医師に相談
9.まとめ:ガングリオンのポイント
残念ながら、ガングリオンを予防する確立された方法はありません。しかし、以下の点に注意することでリスクを軽減できる可能性があります:
1.ガングリオンは関節包とつながっている良性腫瘍。
2.自己処置は重大な感染症のリスクがあるため絶対にNG。
3.診断にはエコーやMRIが不可欠。
4.症状がなければ約半数が自然に消失する。
もし手首のしこりが気になる場合は、必ず整形外科専門医に相談し、適切な診断と治療を受けましょう。
参考文献
- Fernandes CH, et al. Arthroscopic Resection of Dorsal Wrist Ganglion: Results and Rate of Recurrence Over a Minimum Follow-up of 4 Years. Hand (N Y). 2019 Mar;14(2):236-241.
- Clark DM, et al. Surgical and Patient-Centered Outcomes of Open versus Arthroscopic Ganglion Cyst Excision: A Systematic Review. J Wrist Surg. 2022 Jun 13;12(1):32-39.