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脚が急激に老化して歩けなくなる人の共通点5選

掲載日:2025.04.25(最終更新日:2025.04.25)

あなたは「歩けなくなる」という恐怖を抱えていませんか?

 
「最近、階段を上るのがつらい」
「急に足が痛くなって歩けなくなった」
「年をとると足が弱るのは仕方ない…」
 
こんな風に思っていませんか?
 
実は、年齢を重ねて脚が急激に老化し、歩けなくなる人には、ある共通点があります。
今回は、その「知らないと怖い共通点5つ」を詳しくご紹介します。
人生100年時代、いつまでも自分の足で歩き続けるために、今からできる対策をお伝えします。

————目次————
1.なぜ「歩けなくなる」ことが怖いのか?
2.【共通点1】タンパク質不足
3.【共通点2】ビタミンD不足
4.【共通点3】骨粗鬆症
5.【共通点4】関節の痛み
6.【共通点5】運動不足
7.脚の老化を防ぐための5つのポイント
8.今日からできる!脚の老化を防ぐ方法

なぜ「歩けなくなる」ことが怖いのか?


高齢者が「歩けなくなる」と、生活の質が大きく低下します。買い物や通院ができなくなり、自宅に閉じこもりがちになって、心の健康も損なわれます。
さらに深刻なのは、「フレイル」や「サルコペニア」という状態に陥りやすくなることです。
 
フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間にある、身体機能や認知機能が低下している状態のこと。
サルコペニアとは、加齢に伴う筋肉量の減少と筋力低下のことです。特に脚の筋肉が減ると、歩行が不安定になり、転倒・骨折のリスクが高まります[1]
 
これらの状態は、放っておくと急速に進行し、寝たきりの原因にもなります。
では、なぜ脚が急激に老化して「歩けなくなる」のでしょうか?

【共通点1】タンパク質不足


「タンパク質は筋肉の材料」と聞いたことがありますよね。
筋肉の主成分はタンパク質です。タンパク質が不足すると、筋肉を作ることができず、脚の筋力が低下してしまいます。
特に高齢になると、若い頃と同じ量のタンパク質を摂取しても、筋肉を作る効率が下がることが分かっています。

Q: 高齢者はどのくらいのタンパク質を摂るべきですか?

A: 65歳以上の日本人なら、男性で1日60g、女性なら50gが目安とされています[2]。つまり1日3食なら、1食あたり20グラム前後のタンパク質を摂ることが理想です。

Q: どんな食品からタンパク質を摂ればいいですか?

A: 良質なタンパク質源には以下のようなものがあります:
 

・鶏むね肉100g → 約30g

・卵1個 → 約6g

・牛乳コップ1杯 → 約8g

・納豆1パック → 約10g

・ツナ缶(水煮)1缶 → 約14g

 
高齢になると食欲が落ちて、十分な量を食べられないことも多いですよね。
そんなときは「量より質、頻度」を意識してください。
1日3食、各食事でタンパク質を摂ることが大切です。
特に朝食はタンパク質が不足しがちなので、卵料理がおすすめです。
また、運動の後1時間以内にタンパク質を摂取すると、効率よく筋肉がつきますよ。

【共通点2】ビタミンD不足


ビタミンDと言えば、「カルシウムの吸収を助けて骨を強くする」というイメージがありますね。
でも実は、ビタミンDには「筋肉の力を高める」働きもあるんです。特に太ももやお尻の筋肉など、歩くときに使う大きな筋肉を元気にする力があります[3]
ビタミンDが不足すると、筋肉が弱って転びやすくなります。特に、太ももの前にある「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」という筋肉が弱ると、立ったり歩いたりするのが大変になります。
最近の研究では、ビタミンDが足りない高齢者は、転びやすくなるだけでなく、認知症のリスクも高くなることがわかってきました。
 
高齢者は以下の理由で、知らないうちにビタミンD不足になりやすいのです:
 

  1. ビタミンDを体で作る力が弱くなる
  2. 外出が減り、日光を浴びる時間が減る
  3. 食事でビタミンDを摂れていない

Q: ビタミンDはどのくらい摂ればいいですか?

A: 65歳以上の方は、毎日800〜1000IU(国際単位)、つまり20〜25μg(マイクログラム)のビタミンDを摂るのが理想です。

Q: どんな食品にビタミンDが含まれていますか?

A: ビタミンDを多く含む食品には以下のようなものがあります:
・鮭(焼き)1切れ(80g) → 約20μg
・サバ(焼き)半身1枚(100g) → 約8.5μg
・卵1個 → 約1μg
・干ししいたけ(日光乾燥)5g → 約0.85μg
・しらす干し30g → 約1.8μg
 
鮭1切れと卵1個を食べれば、1日の必要量の半分くらいはクリアできます。
 
また、日光を浴びることでも皮膚でビタミンDが作られます。1日15〜30分程度、顔や手を日光に当てることで、ビタミンDの生成を促すことができます。

【共通点3】骨粗鬆症


骨粗鬆症とは、骨の密度や強さが低下して、骨折しやすくなる病気です。特に怖いのは、脚の付け根にある「大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)」が折れることです。
これが起きると、歩けなくなるほどの大きな影響が出ます。かつては、高齢者が大腿骨頸部骨折すると、手術が確立されていなかったため、寝たきりから肺炎を発症し、骨折してから2〜3ヶ月で亡くなることもあったのです。
実は、骨と筋肉はいつもペアで弱くなっていきます。骨粗鬆症とサルコペニアが同時に進行すると、転倒リスクや骨折のリスクが一気に高まってしまいます。

Q: 骨粗鬆症に気づくにはどうすればいいですか?

A: 完全に見分けるのは難しいですが、次のようなサインがあったら注意です:
 

・身長が1年で2cm以上縮んだ

・背中が丸くなってきた

・軽くぶつかっただけで骨折した

 
これらの症状が1つでもあれば、医療機関で骨密度検査を受けることをおすすめします。早めに気づけば、対策もできますよ。
 
骨粗鬆症の予防には、カルシウムをしっかり摂ることが大切です。乳製品や小魚に加え、先ほど解説したビタミンDとタンパク質を含む食材を積極的に摂りましょう。骨粗鬆症を予防する食事5選はこちらで解説しています。

【共通点4】関節の痛み


歩くときに必要な関節である膝や股関節に痛みがあると、自然と体を動かさなくなります。そうすると、筋肉を使わなくなって、どんどん筋力が落ちてしまうのです。
 
「痛いから動かない → 筋肉が弱る → もっと動けなくなる」という悪循環に陥ります。
 
実際、痛みが強い人ほど筋肉が減るリスクが高いという研究結果もあります。さらに、痛みが続くと、動けなくなるだけでなく、うつ・不安・睡眠不足など、心の健康にも影響が出ます。
最近では、鉄不足が痛みを過敏に感じるようになるという報告もあります[4]。腰痛や足の痛みが急に出てきた場合、栄養面の問題が隠れていることもあるのです。

【共通点5】運動不足


使わない筋肉はなくなる」ということわざがあります。これはまさに科学的にも正しいのです。
特に高齢になると、意識して動かないと、どんどん筋肉は減ってしまい、足の老化が加速します[5]

Q: 高齢者の場合、一度落ちた筋肉は戻らないのでしょうか?

A: そんなことはありません!75歳以上でも運動することで筋力が回復すると報告されています[6]。サルコペニアと診断されても、あきらめることはないのです。65歳からの筋力をつける方法はこちら

Q: どんな運動が効果的ですか?

A: まずは自宅で簡単にできる運動から始めましょう。日本整形外科学会が推奨している以下の運動は、脚の筋力を効果的に鍛えることができます:
 

  1. 踵上げ:壁や椅子につかまり、かかとを上げ下げする運動
  2. スクワット:椅子に座るようにお尻を引き、膝を曲げる運動

 
これらは歩行が不安定な方や膝・股関節に痛みがある方にもおすすめです。
 
踵上げは歯を磨きながらや料理をしながらでもできますよ。
これらができるようになれば、次のステップとして「片足立ち」にチャレンジしてみましょう。
 
片足立ちは立つだけでなく、足を振る、目を閉じる、顔を左右や上下に振るなど、様々な応用ができます。1分間の片足立ちで53分間のウォーキングと同じ効果が股関節にかかるという研究もあります。

Q: ウォーキングはどうですか?

A: ウォーキングも素晴らしい運動です。有酸素運動で気分転換にもなりますし、おすすめです。
 
ただし、すでに脚の筋力が落ちている状態でウォーキングを始めると、バランスを崩して転倒する危険が高くなります。
まず「踵上げ」や、「片足立ち体操」などで基礎的な筋力をつけてから、ウォーキングに移行することが安全です。

脚の老化を防ぐための5つのポイント


これまでお伝えした5つの共通点をおさらいしましょう:
 

  1. タンパク質不足
  2. ビタミンD不足
  3. 骨粗鬆症
  4. 関節の痛み
  5. 運動不足

 
これらは複雑に関係し合って、悪循環を作ります。例えば、栄養が不足すると筋肉が作れない。筋肉が減ると運動しなくなる。動かないと骨が弱くなる。そして転倒・骨折へ…という具合です。
 
フレイルやサルコペニアの初期症状に気づくことも大切です。以下のような症状がある場合は注意しましょう:
 

・階段の上り下りがつらくなった

・以前よりも歩くスピードが遅くなった

・重い荷物が持ちにくくなった

・疲れやすくなった

・体重が減少した

今日からできる!脚の老化を防ぐ方法


ここまで読んでくださったあなたは、「脚の老化」の恐ろしさをご理解いただいたかと思います。でも安心してください。今日から始められる対策があります。
 

  1. 1日3食、タンパク質をしっかり摂る
  2. ・毎食、手のひらサイズのお肉や魚、卵や大豆製品を意識して摂りましょう

    ・特に朝食でのタンパク質摂取を心がけましょう

     

  3. 日光浴でビタミンDを活性化
  4. ・毎日15〜30分程度、顔や手を日光に当てましょう

    ・魚類や干ししいたけなど、ビタミンDを多く含む食品を積極的に摂りましょう

     

  5. 食事と運動で骨を強く
  6. ・カルシウム、ビタミンD、タンパク質をバランスよく摂りましょう

    ・適度な負荷がかかる運動で骨密度を維持しましょう

     

  7. 痛みは早めに対処
  8. ・関節の痛みは我慢せず、早めに医師に相談しましょう
    ・痛みがあっても可能な範囲で体を動かす習慣を維持しましょう
     

  9. 自分に合った運動を継続!
  10. ・踵上げ、スクワット、片足立ちを毎日の習慣に

    ・基礎的な筋力がついたらウォーキングなども取り入れましょう

 
これらを続ければ、年齢を重ねても自分の足で歩き続けることができるはずです。

中山クリニックでは、あなたの状態に合わせた栄養相談を行っています。
タンパク質やビタミンDを効率よく摂るための、管理栄養士監修の食事メニューもご紹介しています。
 
人生100年時代、いつまでも自分の足で歩き続けるために、今日から対策を始めませんか?

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引用文献

  1. Physical Activity and Public Health in Older Adults: Recommendation from the American College of Sports Medicine and the American Heart Association
  2. Kobayashi S, et al. High protein intake is associated with low prevalence of frailty among old Japanese women: a multicenter cross-sectional study. Nutr J 2013; 12: 164.
  3. Nakamura K. Vitamin D insufficiency in Japanese populations: from the viewpoint of the prevention of osteoporosis. J Bone Miner Metab. 2006;24(1):1-6.
  4. Youdim MB, et al. The Involvement of Enkephalin System in Analgesia Induced by Brain Iron Deficiency. Nutr Neurosci. 2000;3(5):357-65.
  5. Physical Activity and Public Health in Older Adults: Recommendation from the American College of Sports Medicine and the American Heart Association
  6. Grgic J,et al. Effects of Resistance Training on Muscle Size and Strength in Very Elderly Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Sports Med. 2020 Nov;50(11):1983-1999.

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