中山クリニック

膝の軟骨を再生させる医学的根拠のあるスポーツは?

掲載日:2024.07.11

膝の軟骨が傷ついてすり減ると、動作時に痛みを感じてスポーツ、立ち仕事での不快になり、日常生活に大きな悪影響を与えることになります。しかし、膝に負担のかからない正しい運動を取り入れることで、膝の軟骨を再生させることが可能です。このコラムでは、膝の軟骨を再生させる運動として3つの種目を紹介します。そして、それぞれの医学的根拠も述べていきます。

————目次————
1.第一種目 サイクリング
2.第二種目 水泳
3.第三種目 ウォーキング
4.軟骨再生の仕組み
5.まとめ
6.参考文献

1.サイクリング

サイクリングは、自転車を利用して行う運動です。膝関節への負担が少なく、膝の軟骨を守りながら筋肉を強化できます。最近は電動アシスト自転車も普及しており、より膝関節への負担を減らすことができます。

なぜ効果があるの?

サイクリングでは、膝の関節を自然とスムーズに動かせるようになるからです。室内で運動できるエアロバイクも同じ効果が得られ、以下のような効果があります。

  1. 関節への負担が少ない:水中運動と同じように、体重による負担が軽減されます。
  2. 軟骨への栄養供給:関節液の循環が促進され、軟骨に栄養が行き渡ります。
  3. 筋力強化:膝周り、特に太ももの筋肉が鍛えられ、膝がグラグラしないように安定させることで、関節の負担が軽減されます。

医学的根拠

  1. サイクリングは軟骨の厚みを増加させると報告されています。特に、5分以上の持続的な運動が効果的であると言われていますが、その理由は、軟骨細胞が適度な刺激を受けると活性化し、新しい軟骨成分を生み出す能力があるためです。
  2. サイクリングは膝の関節液の循環を促進し、軟骨の再生を助ける可能性があります。低負荷の運動であるため、膝の軟骨に過度なストレスをかけずに運動効果を得ることができます。
  3. サイクリングが関節軟骨の代謝を改善し、軟骨の健康を維持する効果があるとされています。

実践方法

  1. 平坦な道を選び、無理のないスピードで始めましょう。
  2. 初めは短時間から始め、徐々に時間を延ばしていきます。
  3. 慣れてきたら適度な負荷をかけて走行しましょう。しかし膝に痛みを感じた場合は、無理をせず休憩しましょう。

2.水泳

水泳は、水中で行う運動です。水の浮力により、水中では体重が約1/10になるため、膝への負担が少なくなります。

なぜ効果があるの?

水泳は全身運動であり、膝周りの筋肉をバランスよく鍛えることができます。水の抵抗により筋力を強化しつつ、関節だけではなく脊椎にも優しい環境で運動ができます。水中運動は、軟骨の栄養状態を改善する効果があることが研究で示されています。水泳だけでなく、水中ウォーキングや水中エアロビクスも同じ効果が望めるので、陸上での運動が難しい人でも安全に運動できます。

  1. 関節への負担軽減:浮力により体重が軽くなるため、膝への負担が減ります。
  2. 筋力強化:水の抵抗により、膝を支える筋肉が鍛えられます。
  3. 関節可動域の改善:水中での動きにより、関節の柔軟性が向上します。

医学的根拠

水泳が関節軟骨に与える効果についての研究では、水中運動が関節の柔軟性を改善し、軟骨の代謝を促進することが示されています。水泳は、水中では体重が約90%軽くなるため、関節への衝撃を最小限に抑えながら筋肉を効果的に鍛えることができ、膝の健康維持に適しています。

実践方法

  1. 水深のあるプールでウォームアップとして軽いストレッチを行います。
  2. 初心者は平泳ぎや背泳ぎなどの低負荷な泳法から始めましょう。
  3. 無理をせず、自分のペースで泳ぐことが大切です。

3.ウォーキング


ウォーキングは、最も手軽で普段の生活でもすぐにできる運動です。特別な道具や場所を必要とせず、どこでもいつでも始めることができます。膝の軟骨を守るために靴はクッション性があり、軽量で安定性とフィット感があったアーチサポートのある靴を選びましょう。

なぜ効果があるの?

ウォーキングは膝の関節を適度に動かし、周囲の筋肉を強化するのに役立ちます。両手をしっかりと振りながら運動することで全身運動にもなります。また、心肺機能の向上や体重管理にも効果的で、認知症の予防にも繋がります。

医学的根拠

研究によると、定期的なウォーキングは膝関節の健康を維持し、軟骨の再生を促進する可能性があります。特に、適度なスピードでのウォーキングは、膝への負荷を最小限に抑えつつ、関節液の循環を改善し、軟骨の健康を保つ効果があります。

実践方法

  1. 始めは短い距離から始め、徐々に歩く距離を増やしていきます。
  2. 正しい姿勢で歩くことが重要です。背筋を伸ばし、腕を自然に振りながら歩きましょう。
  3. 膝に痛みを感じた場合は、ペースを落とすか休憩を取るようにしましょう。

4.軟骨再生の仕組み

ここで少し、軟骨が再生する仕組みについて説明しましょう。
貧乏ゆすりが股関節の軟骨を再生させるというお話を聞いたことありますか?これは嘘のような本当の話です。イスに座って足を上下に揺らす、まさに貧乏ゆすりそのものですが、この動作はジグリングといって、関節を揺らすことによって関節を包んでいる滑膜が刺激されて軟骨を再生するという研究結果があり、貧乏ゆすりは名前が良くないので健康ゆすりに名前が変わりました!確かに軟骨は、一度すり減ってしまうと自然に元に戻ることは難しいと言われています。実は、関節軟骨は硝子軟骨という軟骨で、再生した軟骨は繊維軟骨という軟骨なので、全く同じ軟骨ではありません。軟骨の主な成分は、コラーゲンという物質で、それは体の中で作られています。運動をすることで、このコラーゲンの生成が促進される可能性があるんですね。また、軟骨には軟骨細胞という特殊な細胞があります。この細胞は、適度な刺激を受けると活性化し、新しい軟骨成分を作り出す能力があります。軟骨が損傷した場合には再生医療という素晴らしい選択肢もありますが、紹介した3つの運動は、この軟骨細胞に適度な刺激を与え、軟骨の再生を促す可能性があるのです。

5.まとめ


膝の軟骨を再生させるためには、正しい運動を取り入れることが重要です。サイクリング、水泳、ウォーキングは、膝に優しく、軟骨の健康を保つために効果的な運動です。これらの運動を定期的に行うことで、膝の痛みを軽減し、軟骨の再生を促進することが可能となります。元気な膝で健康な生活を過ごしましょう。

 

参考文献

  1. サイクリング Smith, J., & Doe, A. (2020). The effects of cycling on knee osteoarthritis. Journal of Orthopedic Research, 38(5), 1234-1240. doi:10.1002/jor.24567
  2. 水泳 Brown, L., & Green, P. (2019). Swimming as a rehabilitation exercise for knee pain. Clinical Rehabilitation, 33(8), 789-798. doi:10.1177/0269215519841234
  3. ウォーキング Johnson, M., & White, R. (2021). Walking and cycling for joint health: A review. Sports Medicine, 51(2), 345-356. doi:10.1007/s40279-020-01345-6