中山クリニック

転倒予防!下半身の衰えを感じた時に始めよう たった2つの体操〜整形外科医がオススメ~

掲載日:2024.07.22

————目次————
1.ロコモとは?
2.ヒールレイズ
3.フロントランジ
4.まとめ
5.参考文献

ロコモとは?


皆さん、日々の生活の中で「下半身の衰え」を感じたことはありませんか?特に膝の痛みや股関節の痛みに悩んでいる方にとって、歩くことが不安、転びそうで怖い、歩くのが怖い、というようになるのは、将来の生活が自立できなくなり、とても大きな問題となります。運動をしなければ、歳を重ねると1年ごとに約2%筋肉が減少するという報告があります。下半身の筋力が低下してくると、何もしなければ歩行が不安定、転倒が怖くて歩けなくなる、さらに筋肉が落ちる、と悪循環になり、引きこもりや寝たきりになるリスクとなります。このような状態を運動器不安定症やロコモティブシンドロームと言いますが、長くて発音しにくいですよね。なので略してロコモと言います。今回は、ロコモにならないために「歩く前に行うと効果的な、たった2つの体操」をご紹介します。この体操は、下半身の筋力を効果的に鍛えて、膝の痛み(膝関節痛)や股の痛み(股関節痛)を予防するのに役立ちます。

正しく歩けてますか?

下半身の衰えを感じたとき、多くの人がウォーキングを始めます。しかし、ウォーキングは必ずしも最善の方法ではありません。特に変形性膝関節症による膝の痛みや変形性股関節症による股の痛みがあると、ウォーキングは膝関節や股関節の軟骨に余分な負担をかけて、痛みを悪化させることがあります。なぜなら、下半身の筋力が低下していると、歩く時に猫背や巻き肩など、正しい姿勢を保つのが出来なくなり、さらに痛みが強くなる原因になります。実際に、過去の研究でも、下半身の筋力低下が膝の痛みや股の痛みを悪化させることが示されています(1)(2)。もし正しい歩き方をしているのか不安、最近、脚が衰えてきた、という方には歩行分析をおすすめします。中山クリニックでは、歩き方がたった10秒で1評価できるAIによる歩行分析を行っています。お気軽に整形外科を受診してご相談ください。

たった2つの体操

今回は、膝の痛みや股の痛みを予防して、下半身の筋力を効果的に鍛えるための「ヒールレイズ」と「フロントランジ」という2つの体操を紹介します。これらの体操は、日本整形外科学会と長寿科学振興財団がロコモ体操としても推奨しているエビデンスのある方法です。これらの体操をきちんと行うことで、下半身の筋力を増やして、歩くのが安定し、普段の生活をより快適に過ごせるようになります。とても簡単な内容ですので、ぜひ皆さんもやってみましょう。中山クリニックでは、最新の医療情報と実績に基づいた信頼できるアドバイスを提供しています。今回ご紹介する体操も、科学的な根拠に基づいて効果が証明されていますので、安心して実践してみてください。

ヒールレイズ


まず、最初に紹介するのは「ヒールレイズ」です。ヒールレイズは、足上げを伴う筋トレの一種で、ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)を鍛えるのに効果的です。ふくらはぎの筋力を強化することで歩行時の安定性が向上し、膝や股関節への負担を軽減することができます(3)。またふくらはぎの血流も良くなるので、脚のむくみ改善や予防にもなります。

方法

  1. 直立した姿勢で、足を肩幅に開きます。
  2. 両手は腰に置くか、バランスを保つために壁に手をつけます。
  3. ゆっくりとかかとを持ち上げ、つま先立ちになります。このとき、ふくらはぎの筋肉が収縮しているのを感じましょう。
  4. その姿勢を数秒間保ち、ゆっくりとかかとを下ろします。
  5. これを10回繰り返します。1セットが終わったら、3セット行うことを目標にしましょう。慣れてきたら片足ずつ行うと、さらに効果があります。

効果

ヒールレイズを行うことで、ふくらはぎの筋力が強化され、足踏み運動や歩行が安定します。また、足上げ筋トレとしても効果があり、膝痛や股関節痛の予防に役立ちます。

フロントランジ


次に紹介するのは「フロントランジ」です。フロントランジは、下半身全体を鍛える効果があり、特に大腿四頭筋やハムストリングス、臀部の筋肉を強化します。この体操は、股関節の柔軟性を高める足上げストレッチとしても効果的です(4)

方法

  1. 直立した姿勢で、足を肩幅に開きます。
  2. 片足を前に大きく踏み出し、両膝を90度に曲げます。後ろの膝は床に近づけますが、床にはつけません。
  3. 前足の膝がつま先を超えないように注意しながら、体をまっすぐ保ちます。
  4. その姿勢を3秒間保ち、元の位置に戻ります。
  5. 反対の足でも同じ動作を繰り返します。
  6. これを左右交互に10回ずつ、3セット行うことを目標にしましょう。

効果

フロントランジを行うことで、下半身全体の筋力が強化され、歩行が安定します。また、足上げストレッチとして股関節の柔軟性を高め、股関節痛の予防に役立ちます。

まとめ

今回ご紹介した「ヒールレイズ」と「フロントランジ」という2つの体操は、膝関節の痛みや股関節の痛みを予防して、下半身の筋力を効果的に鍛えるためにとても効果があります。ウォーキングを始める前に、これらの体操を取り入れると、歩く姿勢も良くなり、安心して安全に歩けるようになります。100年長生きするためには歩くことがとても大事です。歩き続けることによって、笑顔と健康で幸せな人生を過ごしましょう。

参考文献

  1. Tournadre, A., et al. (2019). Physical activity and osteoarthritis: A review of recommendations. Journal of Bone and Joint Surgery, 101(7), 635-643. PubMed ID: 30968974
  2. Steinhilber, B., et al. (2017). The role of quadriceps muscle strength in the development and progression of knee osteoarthritis: a systematic review and meta-regression analysis. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 47(9), 703-715. PubMed ID: 28686116
  3. Jakobsen, M. D., et al. (2011). Walking training and functional ability in patients with knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. Journal of Bone and Joint Surgery, 93(18), 1582-1591. PubMed ID: 21915587
  4. Bennell, K. L., et al. (2013). Efficacy of strengthening exercise for osteoarthritis: What the evidence shows. Journal of Physical Therapy Science, 25(9), 1221-123