中山クリニック

腰痛改善 寝ながらできる たった4つの簡単ストレッチ!

掲載日:2024.08.24

今回は、みなさんにとても身近な問題の「腰痛」について解説します。特に、寝たままでできる簡単なストレッチを紹介しますので、腰痛に悩んでいる人はもちろん、腰痛を予防したい人にもおすすめです。

————目次————
1.腰痛って、そんなによくあるの?
2.腰痛、どうして起こるの?
3.腰痛を予防するには?
4.寝ながらできる4つの簡単腰痛ストレッチ
5.なぜこのストレッチが効果的なの?
6.危険な腰痛⚠️
7.ストレッチを続けるコツ
8.ストレッチ以外の腰痛予防法
9.まとめ
10.参考文献

腰痛って、そんなによくあるの?

まず、驚くべき事実をお教えします。なんと、日本人の84%、つまり10人中8人以上が人生のどこかで腰痛を経験するんです(1)。考えてみてください。みなさんの周りにいる10人の友達や家族のうち、8人以上が「ああ、腰が痛い」と言ったことがあるということです。腰痛は本当によくある問題で、大人だけでなく、中学生や高校生でも感じることがあります。例えば、長時間机に向かって勉強したり、部活動で体を使いすぎたりすると、腰に負担がかかって痛くなることがあるんです。実は、私自身も2年前に「腰椎椎間板ヘルニア」という腰の病気になり、腰痛と脚の痛みがひどくて仕事を休んだことがあります。ですから、腰痛がいかに辛いか、患者さんの気持ちがとてもわかります。

腰痛、どうして起こるの?

腰痛が起こる理由はたくさんありますが、今日は「筋肉」に注目して説明します。
私たちの体には、腰を支える大切な筋肉がたくさんあります。これらの筋肉を「体幹筋」と呼びます。体幹筋は、私たちの体の中心部分を支える重要な役割を果たしています。
体幹筋は、大きく2つのグループに分けられます:
グローバル筋(表面の大きな筋肉)
ローカル筋(深い部分の小さな筋肉)

この分類は、Bergmarkという研究者が1989年に提唱したもので、現在でも広く受け入れられています(2)
グローバル筋は、体の表面にある大きな筋肉です。筋肉は、せぼね(背骨)に引っ付いてなく、吊橋のケーブルになります。お腹の「6つに割れた」筋肉を見たことがありますか?あれがグローバル筋の一つです。これらの筋肉は、体を大きく動かすときに派手に活躍します。例えば、重い荷物を持ち上げたり、スポーツで力強くジャンプしたりするときに使います。一方、ローカル筋は体の深い部分にある小さな地味な筋肉で、背骨に直接引っ付いており、背骨と背骨を一つ一つつなぐ筋肉です。これらは「インナーマッスル」や「コアマッスル」とも呼ばれます。ローカル筋は、私たちの姿勢を保ったり、歩いたりするときに体を安定させる役割があります。
ここでとても大切なポイントがあります。それは、日常生活で腰痛に悩んでいる人の多くは、このローカル筋が弱くなっているのです。つまり、体の深い部分にある小さな筋肉が十分に働いていないために、背骨がグラグラと安定せず、腰に負担がかかりすぎて痛みが出てしまうんですね。

腰痛を予防するには?


では、腰痛を予防するにはどうしたらいいでしょうか?答えは簡単です。ローカル筋、つまり体の深い部分にある小さな筋肉を鍛えることが大切なのです。でも、心配しないでください。ローカル筋を鍛えるのに、激しい運動や難しいトレーニングは必要ありません。実は、寝ながら簡単にできるストレッチで十分なんです!これからご紹介する4つのストレッチは、私が腰椎椎間板ヘルニアで腰痛、脚の痛みに悩まされていた時、実際にやってみて腰痛が改善して本当に効果を感じました。だから、自信を持っておすすめできます。

寝ながらできる4つの簡単腰痛ストレッチ

それでは、具体的なストレッチの方法を説明しましょう。これらのストレッチは、ベッドや床の上で寝たままでできるので、とても簡単です。毎日少しずつ続けるだけで、腰痛の予防に大きな効果があります。

ストレッチ1:膝抱え横倒しストレッチ

医学的根拠:梨状筋や臀部周囲筋のストレッチになり、坐骨神経の緊張を緩める効果があります(5)

  1. まず、仰向けに寝ころび、両膝をそろえて90度曲げ足裏をつきます。
  2. 腕はリラックスした状態で身体から少し離し右脚が床につくまで深く倒して10〜20秒間キープ
  3. 反対の脚でも同様に行います。
  4. これにより、腰の筋肉を優しく伸ばしてリラックスさせます。

このストレッチは、別名ワニのポーズとも言われます。腰の筋肉をやさしく伸ばしてリラックスさせる効果があります。腰が張っているときや、少し疲れを感じたときに行うと気持ちがいいですよ。

ストレッチ2:ハムストリングスストレッチ

医学的根拠:骨盤が前傾するのを防いで腰椎の負担を減らします(6)

  1. 仰向けに寝ます。
  2. 左脚を天井に向かってまっすぐ上げます。
  3. 膝を少し曲げて、太ももの裏を手で支えます。
  4. その状態で20〜30秒間キープします。
  5. 右脚でも同じように行います。

このストレッチは、腰と脚の裏(ハムストリングス)の筋肉をしっかり伸ばします。ハムストリングスが硬くなると腰に負担がかかるので、このストレッチで柔らかくすることが大切です。

ストレッチ3:ドローイン

医学的根拠:インナーマッスルである腹横筋の筋力を強化し腰椎を安定させ、反り腰を予防します(7)

  1. 仰向けに寝て、膝を立てます。
  2. 息を吐きながら、お腹をへこませます。
  3. へこませた状態を5〜10秒間キープします。
  4. これを10回繰り返します。

このストレッチは、お腹の深い部分にある「腹横筋」という筋肉を鍛えます。腹横筋は、腰を安定させる重要な役割があります。最初は「お腹をへこませる」感覚がつかみにくいかもしれませんが、練習を重ねるうちに上手くなりますよ。

ストレッチ4:ブリッジ

医学的根拠:インナーマッスルである多裂筋、腹横筋、骨盤底筋の他、ハムストリングや大臀筋の筋力を強化します(3)

  1. 仰向けに寝て、膝を立てます。
  2. ゆっくりとお尻を持ち上げます。
  3. 肩から膝までがまっすぐな線になるようにします。
  4. その姿勢を5秒間キープします。
  5. ゆっくりとお尻を下ろします。
  6. これを10回繰り返します。

このストレッチは、お尻の筋肉(臀筋)と腰の深い部分にある「多裂筋」という筋肉を鍛えます。これらの筋肉は腰をしっかりと支える役割があるので、腰痛予防にとても効果的です。

なぜこのストレッチが効果的なの?

ここで少し、なぜこれらのストレッチが腰痛に効果があるのか、科学的な説明をしましょう。
医学の世界では、「ローカル筋を強化することで腰椎の安定性が向上し、腰痛予防に効果的である」ということがわかっています。これは、Hodgesという研究者のグループが行った研究で証明されています(6)。簡単に言うと、体の深い部分にある小さな筋肉(ローカル筋)を鍛えることで、腰の骨(腰椎)がしっかりと安定し、腰痛を予防できるということです。さらに面白い研究結果もあります。あるサッカーチームで、腰痛を経験した選手たちが毎日ストレッチを続けたところ、そのシーズン中に腰痛を訴える選手がゼロだったそうです(7)。これは、定期的なストレッチが腰痛予防にとても効果的だということを示していますね。

危険な腰痛⚠️

腰痛の多くは、今回紹介したようなストレッチで改善したり予防したりできます。けれども、中には特別な注意が必要な腰痛もあるのです!医療の世界では、これを「レッドフラグ腰痛」と呼びます。例えば、次のような場合は要注意です:

  1. 転んだり、ぶつけたりしてから痛くなった腰痛 → 骨折の可能性(脊椎椎体骨折)があります。
  2. がんの治療中で、じっとしていても腰が痛い → がんが骨に広がっている可能性(転移性骨腫瘍)があります。
  3. 熱が出ていて、寝ても腰の痛みが楽にならない → 骨のバイ菌(感染症)の可能性があります。
  4. じっとしても激しい腰の痛みがある → 血管や内臓から来る痛み(大動脈解離 膵炎など)の可能性があります。

こういった症状がある場合は、ストレッチをするのはとても危険で、すぐに整形外科専門医や近隣の医療機関で診察を受けましょう。

ストレッチを続けるコツ


さて、ここまで4つのストレッチを紹介しました。でも、「わかった!やってみよう!」と思っても、なかなか続かないこともありますよね。そこで、最後にストレッチを毎日続けるためのコツをいくつか紹介します。

  1. 時間を決める: 例えば、「毎日寝る前の10分間」と決めてしまいましょう。歯を磨く、顔を洗うなどと同じように習慣にすることで、無意識にストレッチをする時間が作れます。
  2. カレンダーにチェック: ストレッチをした日にカレンダーにシールを貼ったり、チェックを入れたりしましょう。続けた日数が目に見える(可視化)と、やる気が出ますよ!ダイエットも同じですね。
  3. 家族や友達と一緒に: 誰かと一緒にストレッチをすると、楽しく続けられます。お互いに「今日もやったね!」と声をかけ合えば、モチベーションも上がります。
  4. 自分へのご褒美: 例えば、「1週間続けたら好きなおやつを買う」など、小さなご褒美を設定してみましょう。達成感とともに、続ける楽しみが増えます。
  5. アプリを活用: スマートフォンのリマインダー機能や、ストレッチ専用のアプリを使うのも良いでしょう。技術の力を借りて、継続をサポートしてもらいましょう。

ストレッチ以外の腰痛予防法


ストレッチは腰痛予防の強い味方ですが、それ以外にも日常生活で気をつけるといいポイントがあります。

  1. 姿勢を意識する: 勉強中やスマホを見るとき、ついつい猫背で肩が縮んでいませんか?背筋を伸ばし、胸を張って良い姿勢を保つよう心がけましょう。
  2. 適度な運動: ずっと同じ姿勢でいるのは腰に負担がかかります。1時間に1回は軽く体を動かすようにしましょう。
  3. 十分な睡眠: 睡眠不足は筋肉の疲労回復を妨げます。十分な睡眠時間を確保しましょう。ストレスが腰痛の原因になることがあります。
  4. バランスの良い食事: 筋肉や骨を強くするためには、タンパク質やカルシウムなど、栄養バランスの良い食事が大切です。
  5. 重い物は注意して: 重い荷物を持つときは、腰ではなく膝を曲げて脚の力を使いましょう。また、できるだけ体の近くで持つのがコツです。

まとめ


以上、腰痛の原因とストレッチ、予防法について解説しました。ストレッチを日常的に取り入れることで、ローカル筋を効果的に強化し、腰痛の改善と予防に役立てることができます。腰痛に悩まれている方、予防する方法を考えておられる方は、ぜひお試しして下さい。痛みを取って、健康で笑顔にあふれた人生を過ごしましょう!

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参考文献

  1. 中外医学社. (2023). 腰痛の疫学.
  2. Bergmark, A. “Stability of the Lumbar Spine.” Acta Orthopaedica Scandinavica, vol. 60, suppl. 230, 1989, pp. 1-54.
  3. Saragiotto, Bruno T., Chris G. Maher, Tania P. Yamato, Leonardo O. P. Costa, Luciola Menezes Costa, Raymond W. Ostelo, and Luis G. Macedo. 2016. “Motor Control Exercise for Chronic Non-Specific Low-Back Pain.” Cochrane Database of Systematic Reviews, no. 1: CD012004.
  4. Dobija, Lech, Bruno Pereira, Gabriel Cohen-Aknine, Alexandra Roren, Arnaud Dupeyron, and Emmanuel Coudeyre. 2023. “Immediate Effect of Passive Hamstring Stretching on Flexibility and Relationship with Psychosocial Factors in People with Chronic Low Back Pain.” Journal of Physical Therapy Science 35 (9): 140-147.
  5. Kim, Min-Hyeok, and Won-Gyu Yoo. 2021. “The Effects of Core Stabilization Exercise with the Abdominal Drawing-In Maneuver Technique versus General Strengthening Exercise on Lumbar Segmental Motion in Patients with Clinical Lumbar Instability.”International Journal of Environmental Research and Public Health 18 (15): 7811.
  6. Hodges, Paul W. 2003. “Core Stability Exercise in Chronic Low Back Pain.” Orthopedic Clinics of North America 34 (2): 245-254.
  7. Imai A. Interdisciplinary World Congress on Low Back and Pelvic Girdle Pain.2016.