中山クリニック

野球選手に多い!?胸椎黄色靭帯骨化症とは?

掲載日:2024.08.26

阪神タイガースの湯浅京己選手が右脚に力が入らなくなり、胸椎黄色靭帯骨化症と診断されて手術を受けましたね。この黄色靭帯骨化症は国から難病指定されています。なぜが欧米人より日本人に多く発生する病気で、過去にも日本人プロ野球選手で手術した症例が報告されています(1)。今回は「胸椎黄色靭帯骨化症」というちょっと難しい名前の病気について、わかりやすく解説していきます。

————目次————
1.体の仕組み
2.胸椎黄色靭帯骨化症とは?
3.どんな症状が出るの?
4.どうやって診断するの?
5.治し方は?
6.予防法はあるの?
7.生活上の注意点
8.まとめ
9.参考文献

まずは体の仕組みから

背骨(せぼね)って何?

みなさんは背骨について知っていますか?背骨は私たちの体を支える大切な骨で、首から腰まで続いています。背骨は小さな骨がたくさん重なってできていて、それぞれの骨を「椎骨(ついこつ)」と呼びます。椎骨の中には、脊柱管というトンネルがあり、脳からの手や足を動かす命令系統である脊髄神経が通っています。
背骨は大きく分けて5つの部分があります:

  1. 頸椎(けいつい):首の部分
  2. 胸椎(きょうつい):胸の部分
  3. 腰椎(ようつい):腰の部分
  4. 仙椎(せんつい):お尻の上の部分
  5. 尾椎(びつい):尾てい骨(お尻の一番下)

今回お話しする病気は、この中の「胸椎」という部分に関係しています。

黄色靭帯(おうしょくじんたい)とは?

靭帯は、骨と骨をつなぐ丈夫なひもみたいなものです。ゴムひものように弾力性があり、体を動かすときに骨がバラバラにならないように支えています。背骨の中には、たくさんの種類の靭帯があります。その中の1つが「黄色靭帯」です。黄色靭帯は、背骨の後ろ側にあって、背骨を後ろから支えています。名前の通り、少し黄色っぽい色をしています。

胸椎黄色靭帯骨化症とは?

さて、ここからが本題です。「胸椎黄色靭帯骨化症」という病気について説明していきます。

病気の名前を分解してみよう

この病気の名前、長くて難しそうですよね。でも、分解して考えるとわかりやすくなります:

  • 胸椎:背骨の胸の部分
  • 黄色靭帯:背骨を支えている黄色の靭帯
  • 骨化:骨のようにかたくなること
  • :病気のこと

つまり、「胸の部分の背骨にある黄色靭帯が骨のようにかたくなる病気」という意味ですね。

靭帯が骨化する原因は?

普通、靭帯はやわらかくてしなやかです。でも、この病気になると、靭帯の中にカルシウムがたまっていき、だんだん骨のようにかたくなっていきます。これを「骨化」と呼びます。骨化が起こる理由は、まだはっきりとはわかっていません。しかし、プロ野球選手や重労働で発生することが多いので、機械的なストレスが原因かもしれません。他にも、以下のようなことが関係していると考えられています:

  1. 年齢:年をとるにつれて起こりやすくなります。
  2. 遺伝:家族に同じ病気の人がいると、なりやすいかもしれません。
  3. ホルモンのバランス:体の中のホルモンのバランスが崩れると、起こりやすくなるかもしれません。
  4. 生活習慣:姿勢が悪かったり、同じ姿勢を長く続けたりすると、影響があるかもしれません。

どんな症状が出るの?

胸椎黄色靭帯骨化症になると、どんな症状が出るのでしょうか?主な症状を見ていきましょう。

痛み

背中や胸に痛みを感じることがあります。特に、長時間同じ姿勢でいたり、急に体を動かしたりしたときに痛みが強くなることがあります。

しびれ

足がしびれたり、ピリピリとした感覚があったりすることがあります。これは、骨化した靭帯が骨の中の脊柱管で脊髄神経を圧迫しているために起こります。

歩きにくさ

病気が進むと、足がうまく動かせなくなったり、歩くのが難しくなったりすることがあります。

その他の症状

  • ・トイレが近くなる
  • ・足の力が弱くなる
  • ・体のバランスが取りにくくなる

これらの症状は、はじめはあまり強く出ないことが多いです。例えば、青信号が点滅したので横断歩道を走って渡ろうとしたけども転けそうになったとか、階段を降りようとしたけど手すりがないとフラフラするようになった、などあまり気づかないうちに病気が進行していることもあります。

どうやって診断するの?

まず、医師はあなたの症状や、いつからそれが始まったのかなどを詳しく聞きます。家族に同じような病気の人がいないかも聞くかもしれません。次に、実際にあなたの体を診察します。背中を触ったり、手足の力や感覚、神経の反射を確認します。そして一番重要なのが画像検査です。

  1. レントゲン検査:X線を使って骨の変形がないか、全体の形を調べます。
  2. CT検査:レントゲンよりも詳しく骨の様子を見ることができます。
  3. MRI検査:神経の状態を詳しく調べます。特に骨化した靭帯が神経が圧迫されていないか、分かります。

これらの検査を組み合わせることで、症状と画像診断を総合的に判断して正確に病気を診断することができます。

治し方は?

胸椎黄色靭帯骨化症と診断されたら、どのように治療するのでしょうか?治療方法は大きく分けて2つあります。

保存治療

症状が軽い場合は、まず保存治療を試みます。手術をせずに、薬や運動療法などで症状を和らげる方法です。外来ではレントゲンを撮影すると偶然見つかることがよくありますが、ほとんどの方は経過を見ているだけで普段の生活は問題なく過ごせます。

  1. 薬物療法
    ・痛み止めの薬を使って、痛みやしびれを和らげます。
    ・神経の働きを良くする薬を使うこともあります。
  2. リハビリ
    ・理学療法士さんと一緒に、体を動かす練習をします。
    ・転倒しないように筋力をつけたり、姿勢を良くしたりする運動を行います。
  3. 生活習慣の改善
    ・正しい姿勢を心がけます。
    ・適度な運動を行い、体重管理に気をつけます。

手術療法

保存的治療で症状が良くならない場合や、症状が重い場合は、手術を行うことがあります。
手術の目的は主に2つあります:

  1. 骨化した靭帯を取り除く
  2. 圧迫されている神経を解放する


手術にはいくつかの種類があり、患者さんの状態に合わせて最適な方法が選ばれます。

  1. 椎弓切除術
    ・背骨の後ろ側にある「椎弓」という部分を取り除きます。
    ・これによって、神経への圧迫を解放します。
  2. 骨化巣切除術
    ・骨化した靭帯を直接取り除きます。
    ・より複雑な手術ですが、骨化の原因を取り除くことができます。
  3. 椎体固定術
    ・不安定になった背骨を固定します。
    ・金属の器具を使って、背骨をしっかりと固定します。

手術後は、リハビリテーションを行って、徐々に日常生活に戻れるようにしていきます。

予防法はあるの?


胸椎黄色靭帯骨化症を完全に予防する方法はまだわかっていません。でも、次のようなことに気をつけると、病気になるリスクを減らせるかもしれません。

  1. 正しい姿勢を保つ
    ・背筋を伸ばして座ったり歩いたりしましょう。
    ・長時間同じ姿勢でいるのは避けましょう。
  2. 適度な運動をする
    ・ウォーキングや水泳など、背中に負担をかけすぎない運動がおすすめです。
    ・筋力トレーニングで背中の筋肉を鍛えるのも良いでしょう。
  3. 体重管理
    ・適正体重を維持することで、背骨への負担を減らせます。
  4. 定期的な健康診断
    ・早期発見・早期治療が大切です。
    ・気になる症状があれば、すぐにお近くの医師に相談しましょう。

生活上の注意点

胸椎黄色靭帯骨化症と診断された場合、日常生活で気をつけるべきことがあります。

  1. 無理をしない
    ・重いものを持ち上げたり、急な動きをしたりするのは避けましょう。
    ・痛みを感じたら、すぐに休憩を取りましょう。
  2. 生活環境の整備
    ・体に負担が少ないよう、布団よりベット、床に座るよりソファなど洋式の生活にしましょう。
    ・枕の高さを自分に合ったものを選びましょう。
  3. 定期的な通院
    ・医師の指示に従い、定期的に診察を受けましょう。
    ・症状の変化があれば、すぐに相談しましょう。

まとめ


ここまで、胸椎黄色靭帯骨化症について詳しく見てきました。難しい病気ですが、少しずつ理解できたでしょうか?この病気は、完全に治すのは難しいかもしれません。でも、早期に発見して適切な治療を受ければ、症状を和らげたり、進行を遅らせたりすることができます。大切なのは、自分の体に関心を持ち、異常を感じたらすぐにお近くのかかりつけ医に相談することです。また、日頃から正しい姿勢や適度な運動を心がけることで、健康な生活を過ごしましょう。

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参考文献

  1. Kato K, Yabuki S, Otani K, Nikaido T, Otoshi KI, Watanabe K, Kikuchi SI, Konno SI. Ossification of the ligamentum flavum in the thoracic spine mimicking sciatica in a young baseball pitcher: a case report. Fukushima J Med Sci. 2021 Apr 10;67(1):33-37.