右(左)片側だけ痛くなる股関節の謎に迫る!原因と治療法を徹底解説
掲載日:2024.08.28
股関節は、脚の付け根にあり、下肢を動かす時の原動力になります。体重を支えて脚を色々な方向に動かすとても重要な関節ですね。実は人間の関節で最も安定した関節で、強固な靭帯やしっかりとした筋肉に覆われています。今回は、多くの人が悩んでいる「股関節の痛み」、特に「片側だけ痛む股関節」について詳しく解説していきます。
1.股関節って何?なぜ大切なの?
2.どうして片側だけ痛くなるの?
3.どんな症状が出るの?
4.診断はどうやってするの?
5.どうやって治すの?
6.予防法はあるの?
7.まとめ
1.股関節って何?なぜ大切なの?
まず、股関節について簡単に説明しましょう。股関節は、私たちの体の中で最も大きな関節の一つです。脚の付け根で(太ももを曲げた時に皮膚に皺ができるところ)にあって、歩いたり、走ったり、しゃがんだりするときに重要な役割を果たします。
つまり、日常生活のほとんどの動作に関わっているのですね!股関節は、「ボールとソケット」のような構造になっています。大腿骨(太ももの骨)の頭の部分が「ボール」で、骨盤の窪み(臼蓋)が「ソケット」です。この構造のおかげで、私たちは脚を自由に動かすことができるのです。
2.どうして片側だけ痛くなるの?
股関節の痛みは、両方の股関節に起こることもありますが、片側だけ痛くなることも多いんです。でも、なぜ片側だけ痛くなるのでしょうか?主な理由をいくつか挙げてみましょう。
①生まれつきの形の違い
日本人、特に女性の中には、生まれたときから片側の股関節の「ソケット」(臼蓋)が浅い人がいます。これを「発育性股関節形成不全」と呼びます。以前は「先天性股関節脱臼」と呼ばれていましたが、実際にお母さんのお腹の中で脱臼していることはほとんどなく、成長する過程で脱臼するので発育性と呼び名が変わりました。そして、臼蓋が浅い状態だと、体重を受ける面積が小さくなるので、そこに負担が集中しやすくなります。若いうちは筋肉が強くて軟骨も厚いので大丈夫なのですが、40歳を過ぎると筋肉が落ちて運動不足から体重も増えて(世間のお母さんゴメンなさい)、股関節の痛みが出やすくなってきます。
②怪我や他の関節の問題
例えば、右膝を怪我したり、右膝が変形性膝関節症になると、右足に体重がかかると痛いので、かばって歩くようになります。そうすると、反対側の左脚に余計な負担がかかり、左の股関節が痛くなることがあります。
③運動や仕事での偏った使い方
普段の生活や仕事で、片方の足ばかり使うような動作を繰り返していると、その側の股関節に負担がかかりやすくなります。
3.どんな症状が出るの?
股関節の痛みには、いくつかの特徴的な症状があります。
- ・太ももの付け根(鼠径部)が痛む
- ・長時間歩いたり、立っていたりすると痛みが強くなる
- ・階段の上り下りが辛い
- ・しゃがむのが難しい
- ・足を開いたり閉じたりするときに痛みがある
4.診断はどうやってするの?
股関節の痛みの原因を調べるために、いくつかの検査を行います。
①レントゲン検査
正常な股関節像 | 臼蓋形成不全の像 |
骨の形や関節の隙間を見ることができます。変形や軟骨のすり減りがわかります。
②超音波検査(エコー)
関節の周りの筋肉や軟部組織の状態を調べることができます。炎症や水がたまっていないかチェックします。
③MRI検査
XP異常なし | MRI異常あり |
骨や軟骨、周りの組織の詳しい状態を見ることができます。レントゲンでは分からない初期の異常も見つけられます。
④血液検査
5.どうやって治すの?
股関節の痛みの治療には、大きく分けて3つの方法があります。
保存療法
まずは、手術をしないで治す方法から始めます。
- ・運動療法:股関節周りの筋力をつけるリハビリで股関節の痛みが改善されます。 1)
- ・ストレッチ:座った状態で踵を上下に動かす「ジグリング」という運動が効果的です。 2) いわゆる貧乏ゆすりですが、イメージが悪いので健康ゆすり体操と称されます。足を乗せるだけでジグリングしてくれる器械が販売されています。
- ・生活習慣の改善:体重をコントロールし、クッション性のある靴を履くようにします。クッション性のある靴は荷重を吸収するので関節軟骨の負担が軽減します。
- ・薬物療法:痛み止めや炎症を抑える薬を使います。原因を治すのではなく対処療法になります。
- ・注射療法:股関節に痛み止めや炎症を抑えるステロイド注射します。腰椎由来の痛みと鑑別するため診断目的でブロック注射を行うこともあります。最近はレントゲン透視下ではなく、被曝しない超音波(エコー)を使って正確に注射できるようになりました。
再生医療
最近、非常に注目されている治療法です。入院する必要なく自分の体の細胞を使って、傷んだ部分を治します。
- ・血液を使う方法:自分の血液から再生能力が豊富な成分を取り出して関節に直接注射します。変形性関節症の炎症を抑えることで痛みを和らげます。 3) 1時間以内で治療が完結します。
- ・脂肪細胞を使う方法:お腹やお尻の脂肪細胞を取り出して培養し、再生能力がとても旺盛な幹細胞としてから約1〜2ヶ月後に注射します。合併症なく有意に臨床スコアが短期間で改善され、非常に有望な治療として注目されています。 4)
- ・生活習慣の改善:体重をコントロールし、クッション性のある靴を履くようにします。
これらの方法のメリットは、自分の細胞を使うのでアレルギー反応や免疫拒絶反応が起こらないため安全性が非常に高いです。デメリットは、保険診療の適応外なので、費用が高くなることです。
手術療法
保存療法や再生医療で効果が見られない場合は、手術も選択肢になります。
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- ・関節鏡手術:小さな傷で関節の中を治します。主に関節唇(関節の縁にある軟骨)の損傷を修復します。
- ・骨切り術:50歳くらいまでの比較的若い人、重労働やスポーツをどんどん楽しみたい人に適しています。股関節の適合性を改善して、応力が集中しないようにして関節の負担を減らします。
- ・人工股関節置換術:関節の変形が進んでいる場合に行います。最近は手術技術が進歩し、ナビゲーションやロボットを使った手術も開始されました。術後、早期からリハビリが可能になっています。
6.予防法はあるの?
股関節の痛みを予防するために、日常生活で気をつけることがあります。
- ・適度な運動:ウォーキングや水中歩行など、関節に負担の少ない運動を心がけましょう。
- ・体重管理:体重の増加は関節への負担になります。適正体重を保ちましょう。
- ・正しい姿勢:長時間同じ姿勢でいることは避け、こまめに姿勢を変えましょう。
- ・靴選び:クッション性のある、足にフィットする靴を選びましょう。
- ・和式生活を控える:床に座っての正座やあぐら、布団で寝るためにしゃがむなどの姿勢は股関節に負担がかかります。椅子やソファに座り、ベットで寝るなど洋式の生活スタイルを心がけましょう。
7.まとめ
股関節の痛み、特に片側だけの痛みは、様々な原因で起こります。痛みが続く場合は、早めに整形外科を受診することが大切です。適切な診断と生活指導、治療により、症状が悪くなる前に改善することができます。また、日常生活での予防も重要です。適度な運動、体重管理、正しい姿勢など、小さな心がけが大きな違いを生みます。身体の痛みは「何かがおかしい」というサインです。我慢せずに、お近くの整形外科専門医に相談してくださいね。早めの対処が、より良い治療につながります。軟骨を守って痛みのない健康で元気な生活を送るために、股関節を大切にしていきましょう!
再生医療 無料カウンセリング
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股関節の症例について
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参考文献
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- Hunter DJ, Bierma-Zeinstra S, et al. (2023). Recommendations for the delivery of therapeutic exercise for people with knee and/or hip osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage, 31(10), 1301-1310.
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