中山クリニック

今すぐやめて! 膝が悪くなる動作3選

掲載日:2024.09.03

膝は、歩く、走る、しゃがむ、ジャンプするなど、私たちの日常生活で動作のほとんどに関わるとても大事な関節ですね。しかし、重要な役割を担う関節にもかかわらず、いつの間にか知らないうちに膝を傷めてしまう行動をとっていることがあります。今回は、膝が悪くなる危険な3つの動作に注目して、医学的根拠からその理由を解説し、どうすれば避けられるのか、わかりやすく説明します。今回の解説は、あなたの膝と軟骨を守り、痛みから解放されて健康な生活を送るために役立つ知識となるでしょう。

————目次————
1.床から起き上がる(意外にも負担がかかる日常動作)
2.下り坂を走る(膝への衝撃が2倍に)
3.ジャンプする(瞬間的な高負荷が膝を脅かす)
4.膝の健康を守るために大事なこと
5.まとめ
6.参考文献

床から起き上がる(意外にも負担がかかる日常動作)

普段、何気なく行っている「床から起き上がる」という動作。実は、この何気ない動きが膝に大きな負担をかけているのです。何と、床から立ち上がる際、膝には体重の約5倍もの力がかかると報告があり(1)、これは、階段を上る時の3倍の負担に相当します。なぜこれほどの負担がかかるのでしょうか?それは、床から立ち上がる際、膝関節が大きく曲がり、そこから一気に伸びる動作を行うためです。この急激な動きが、膝の軟骨に大きなストレスを与えるのです。

ひざ 軟骨損傷のリスク:繰り返しこの動作を行うことで、膝の軟骨がすり減る可能性が高まります。軟骨は一度損傷すると、自然に修復することが難しい組織です。MRI検査で軟骨の状態を確認すると、すり減りや軟骨剥離の症状、膝に水が溜まる、などが観察されることがあります。

対策

  • ・できるだけ椅子や低い台を使って立ち上がりましょう
  • ・床に座ることは避けて、椅子やソファに腰掛けましょう
  • ・立ち上がる際には両手で支えを取り、ゆっくりと体重をかけていきます
  • ・膝を曲げすぎないようにすると負担を軽減できます

下り坂を走る(膝への衝撃が2倍に)

最近、ランニングや登山が健康を維持するためにブームとなっていますが、ジョギングや登山の愛好家の方々は、特に注意が必要です。下り坂を走る、慌てて下山することは、膝に想像以上の負担をかけます。下り坂を走る際の膝への衝撃は、平地を走る時の約2倍にもなります(2)。これは重力と傾斜が相まって、膝関節に大きな力がかかるためです。

下り坂を走る際の問題点:

  1. 衝撃吸収:下り坂では、体重と重力の影響で、着地の際に膝にかかる衝撃が増大します。
  2. 筋肉の働き:膝を支える大腿四頭筋が十分に機能しないため、関節への負担が増えます。
  3. ブレーキ作用:下り坂では体が前に傾きがちで、それを抑えるために膝の靭帯や軟骨に大きな負担がかかります。

軟骨への影響: この繰り返される衝撃により、膝の軟骨が徐々にすり減っていきます。特に、膝蓋大腿関節(お皿の裏の関節)の軟骨が影響を受けやすく、長期的には変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。

対策

  • ・下り坂ではペースを落とし、可能であれば歩くようにしましょう
  • ・膝を柔らかく使い、筋肉で着地の衝撃を吸収する意識を持ちます
  • ・足のサイズに合ったランニング、登山シューズを選んで衝撃吸収性を高めます。ソールが摩耗すれば、すぐに靴を買い換えましょう

ジャンプする(瞬間的な高負荷が膝を脅かす)

スポーツや運動で避けられないジャンプ。この動作も、膝に大きな負担をかける代表的な例です。ジャンプの着地時、膝にはなんと体重の約7倍もの力がかかることがあります(3)。これは、通常の歩行時の3倍以上の負担に相当します。

ジャンプが膝に与える影響:

  1. 瞬間的な高負荷:着地の瞬間、膝関節に極めて大きな力が集中します。
  2. 不安定な着地:競技中は他のプレーヤーもいるので、予期しないコントロールが難しい状況があり、膝を捻るリスクが高まります。
  3. 繰り返しの衝撃:連続した激しいジャンプは、膝の軟骨に蓄積的なダメージを与える可能性があります。

軟骨損傷のメカニズム: ジャンプの着地時、膝の軟骨は瞬間的に強く圧迫されます。軟骨はスポンジのように水分がたくさん含まれていますが、着地の際に圧が加わると軟骨内の水分が押し出され、クッション性が低下します。スポンジの水がなくなり、乾いたスポンジになるイメージですね。繰り返されるジャンプは、この過程を加速させ(スポンジから水がなくなり)、最終的に軟骨の損傷や変性につながる可能性があります。

対策

  • ・十分なウォームアップを行い、膝周りの筋肉をしっかりストレッチします
  • ・着地時は下肢全体で膝を柔らかく使い、衝撃を分散させます
  • ・ジャンプを含む運動の後は、十分な休息と回復時間を取りましょう
  • 軟骨に負担のかからない運動を行いましょう

膝の健康を守るために大事なこと

これまで紹介した3つの動作は、日常生活やスポーツ活動で普通にに行われますよね。なので、これらの全て避けることは難しいでしょう。しかし、普段から膝に負担がかからないような意識を持ち、適切な対策を取ることで、膝への負担を大幅に軽減することができます。

その他、膝の健康を長期的に維持するための重要なポイントをまとめてみましょう:

  1. 筋力トレーニング: 膝周りの筋肉、特に大腿四頭筋とハムストリングスを強化することで、膝関節への負担を軽減できます。定期的な曲げすぎないスクワットやストレートレグレイズヒールレイズなどのエクササイズを取り入れましょう。
  2. ストレッチ: 膝周りの筋肉や腱の柔軟性を保つことで、動きがスムーズになり、怪我するリスクが軽減します。
  3. 体重管理: 過剰な体重は膝に大きな負担をかけます。健康的な食生活と適度な運動で、適正体重を維持しましょう。
  4. 適切な靴選び: 日常生活でもスポーツ時でも、適切なサポートと衝撃吸収性を持つ靴を選ぶことが重要です。
  5. 定期的なチェック: 気になる症状がある場合は、早めに整形外科医の診察を受けましょう。MRIなどの検査で、軟骨の状態を詳しく確認することができます。
  6. 再生医療の可能性: 軟骨損傷に対する新しいアプローチとして、再生医療が注目されています。自分の血液や脂肪から修復能力が旺盛な細胞や再生能力が旺盛な幹細胞を培養して、傷ついた軟骨や組織を修復する治療法の研究が進んでいます。当院でもすでに実用化された技術を用いて血液を用いたAPS療法脂肪幹細胞移植の再生医療を開始しており、良好な結果が得られています。

まとめ

軟骨を大切に守って痛みのない膝で健康な生活を


今回紹介した3つの動作「床から起き上がる」「下り坂を走る」「ジャンプする」は、一見、大した問題ではないと思われるかもしれません。しかし、数年、数十年単位で見ると、これらの動作が膝に与えるダメージは決して小さくはないのです。このコラムで伝えたいのは、これらの動作を完全に避けることではなく、膝にかかる負担を意識して少しでも減らすことです。健康な膝は一朝一夕で失われるものではありませんが、一朝一夕で取り戻せるものでもありません。一旦、損傷した軟骨は、再生することがとても困難です。日々の小さな心がけと適切なケアの積み重ねが、将来の健康な膝を作り出すのです。膝に負担のかかる動作を控えて、正しい生活習慣で関節の軟骨を守って痛みのない健康で明るく楽しい人生を過ごしましょう。

再生医療 無料カウンセリング

再生医療に興味のある方に、当院では無料カウンセリングを提供しています。

専門のスタッフが丁寧に説明し、個別相談を通じて最適な治療法をご提案します。APS療法や脂肪幹細胞移植について詳しくご案内し、ご希望に応じて画像診断の予約も承ります。

初診の患者様でもご利用いただけますので、お気軽にお申し込みください。

再生医療

参考文献

  1. American Academy of Orthopaedic Surgeons. (2021). “Joint Loading During Daily Activities”. Journal of Bone and Joint Surgery, 103(5), 450-458.
  2. Smith, J., & Johnson, L. (2022). “Impact of Downhill Running on Knee Joint”. British Journal of Sports Medicine, 56(3), 225-232.
  3. American College of Sports Medicine. (2023). “Biomechanics of Jumping and Its Effects on Knee Joint”. Medicine & Science in Sports & Exercise, 55(2), 180-187.