中山クリニック

そのサプリメント、本当に必要?過剰摂取が招く健康リスク【管理栄養士監修】

掲載日:2025.04.04(最終更新日:2025.04.07)

サプリメントは手軽に栄養を補える反面、正しい知識がないまま使いすぎると健康リスクを高める可能性があります。同じ成分のサプリを過剰に摂取すると体内のバランスが乱れ、思わぬ不調を招く恐れも。近年ではサプリメントの危険性が注目を集めており、安全性や適切な量・使い方に関する知識を持つことが大切です。本コラムでは、管理栄養士の視点から、サプリメントを安心して利用するためのポイントを詳しく解説します。

1.サプリメントと栄養補給の基本


サプリメントは、食事だけでは補いきれない栄養素を手軽に摂取できる手段として広く普及しました。ビタミンやミネラルなど、特定の成分を効率よく補給できるというメリットがあります。現代の食生活は外食や中食が増え、野菜や果物の摂取が不足しがちです。こうした背景から、「足りない栄養素を補うためのサポート役」としてサプリメントは多くの人に利用されています。

しかし、サプリメントはあくまで食品の一種です。薬のように即効性や治療効果をうたうものではありませんし、厳密な審査を経ているわけでもありません。そのため、過剰に期待しすぎたり、誤った使い方をしたりすると、思わぬ健康トラブルを引き起こすおそれがあります。食事を中心とした「基本の栄養バランス」を整えたうえで、補助的に活用することが理想的です。

2.サプリメントを摂取するリスク


サプリメントは手軽に購入できる反面、過剰摂取への注意喚起が十分でないケースも少なくありません。たとえば、「栄養不足が心配だから」と一度に複数種類のサプリを大量に飲んだり、早く効果を得たい一心で推奨量を大幅に超えて摂取したりする方もいます。
こうした行為が招くリスクとして、まず考えられるのがビタミンやミネラルの過剰症です。特に脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は体外に排泄されにくく、過度に蓄積すると頭痛、めまい、吐き気、肝機能障害など深刻な症状を引き起こす場合があります。
 

【ビタミン・ミネラルの過剰摂取による症状】

ビタミン ミネラル
種類 症状 種類 症状
ビタミンA 脱毛
皮膚の剥離
カルシウム 泌尿器結石
ビタミンD 高カルシウム血症
軟組織の石灰化
鉄沈着症
ビタミンE 下痢など 亜鉛 胃腸の刺激
膵臓の異常等
ビタミンB6 手足のしびれや感覚異常
シュウ酸腎臓結石
肝臓・脳の機能障害
ナイアシン 皮膚発赤作用
消化管・肝臓障害
マグネシウム 軟便
下痢

3.成分別に見る過剰摂取の注意点

ビタミンA、D、E、K(脂溶性ビタミン)

脂溶性ビタミンは体に蓄積されやすい性質を持つため、過剰摂取による弊害が現れやすいとされています。たとえばビタミンAは、肝臓に蓄積すると頭痛や視力異常、吐き気などを引き起こし、重症化すれば肝機能障害に至るケースもあります。ビタミンDはカルシウムの吸収を高める一方で、大量摂取すると高カルシウム血症の原因となり、骨や血管、腎臓などにダメージを与えるリスクがあります。
またビタミンEも、過度な摂取では出血傾向や免疫機能の低下、筋力の低下などが報告されています。ビタミンKに関しても血液凝固作用に関与するため、抗凝固薬との併用に注意が必要です。

●POINT

これら脂溶性ビタミンは、サプリメントだけでなく普段の食事からもある程度摂取できます。複数のビタミン配合サプリを併用している場合は特に注意し、上限を超えないよう気をつけましょう。

ビタミンB群、C(水溶性ビタミン)

ビタミンB群やビタミンCは水溶性のため、余分な分は尿とともに排泄されると一般的に言われています。しかし、それでも極端な大量摂取は安全とは限りません。ビタミンCは耐容上限量が定められていないものの、過剰に摂取すると下痢や胃腸の不調を起こすことがあります。ビタミンB6を長期間の高用量摂取により感覚神経障害(手足のしびれや感覚異常)が報告されています。
「水溶性だから安心」と安易に考えず、自分の生活習慣や食事内容、目安摂取量をしっかり考慮したうえで利用する必要があります。

ミネラル(鉄・亜鉛・セレンなど)

ミネラルも重要な栄養素ですが、体内での許容量を超えると深刻な問題が起こり得ます。たとえば鉄は不足しても貧血や倦怠感などを引き起こしますが、過剰になると消化器症状や肝障害を誘発する可能性があります。亜鉛は過剰摂取によって銅の吸収が阻害され、貧血や免疫力低下を招くことがあります。またセレンは、極端な過剰摂取で脱毛や爪の変形、神経障害などの症状が報告されています。

●POINT

ミネラル系サプリメントは特に成分量が多い傾向がありますので、複数製品を同時に利用する際は成分表を細かく確認し、総摂取量を把握することが大切です。

4.サプリメント選びの注意と正しい活用法

信頼できるメーカーを選ぶ

製造過程や品質管理の体制が整っているメーカーかどうかを確認しましょう。GMP(Good Manufacturing Practice)認証を取得していたり、第三者機関の検査を受けていたりするメーカーは安全面で信頼性が高いと考えられます。

目的を明確にする

「不足している栄養を補うのが目的なのか」「美容やダイエット効果を狙いたいのか」など、目的によって選ぶべき成分やサプリメントの種類は異なります。むやみに流行や広告に流されず、自分に必要な栄養が何かを再確認しましょう。

適切な摂取量を守る

サプリメントにはメーカーごとの推奨量や1日の目安摂取量が記載されています。早く結果を得たいからといって、それを超えた分量を摂ってしまうと「サプリメント 危険性」を高めることになりかねません。医師や管理栄養士に相談しながら調整するのが理想的です。

食事とのバランスを大切に

サプリメントはあくまで補助的な役割です。基本となるのは日々の食事からの栄養摂取であり、食事の質を高めることが先決。バランスの良い食事をとったうえで、不足しがちな栄養素をサプリで補うと考えれば、過剰症のリスクは大きく下がります。

5.まとめ

まとめ
サプリメントは忙しい現代人にとって、栄養不足を補う心強い存在です。しかし、使用方法を誤ったり過剰摂取に走ったりすると、サプリメントの危険性に気が付かないまま健康被害を招く恐れがあるのです。サプリメントを利用する際には、まず自分の食生活や健康状態を客観的に見直し、本当に不足している栄養素は何かを確認しましょう。

6.よくある質問(FAQ)

過剰摂取かどうかを自分でチェックする方法はありますか?

まず、利用しているサプリをすべてリストアップし、それぞれの成分量と1日の推奨摂取量を比較することから始めましょう。ビタミンやミネラルならば、各成分の耐容上限量がガイドラインなどで定められていますので、それを超えていないか確認してください。

病院から処方されている薬とサプリを併用しても大丈夫ですか?

サプリメントの成分によっては、薬の効果を増幅または減弱させる相互作用が発生することがあります。特に抗凝固薬、免疫抑制薬、ホルモン剤、降圧剤などを服用中の方は必ず主治医や薬剤師に相談してください。自己判断での併用は非常に危険です。

マルチビタミンと単体のビタミン剤を併用すると、過剰摂取になってしまいますか?

マルチビタミンの成分量と単体ビタミン剤の含有量を把握しなければ、重複する栄養素による過剰症が起こる可能性があります。特に脂溶性ビタミンAやD、Eは蓄積しやすく、注意が必要です。複数のサプリを利用する際には、メーカーの情報や栄養成分表示を確認してください。

引用文献

  1. 厚生労働省. 『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
  2. 国立健康・栄養研究所. 『「健康食品」の安全性・有効性情報』
  3. EFSA Journal. Tolerable Upper Intake Levels.
  4. Institute of Medicine. Dietary Reference Intakes. National Academies Press. 2001.
  5. ATSDR. Toxicological Profile for Selenium. 2003.
  6. NIH Office of Dietary Supplements.