中山クリニック

その“ちょっと濃い味”が危ない?塩分と血圧の正しい話と、栄養指導でできること【管理栄養士監修】

掲載日:2025.04.30(最終更新日:2025.04.30)

味が濃い方が美味しい
スープを残すのはもったいない
 
——そんな思いで、日々の食事を楽しんでいませんか?
 
実はその“ちょっと濃い味”が、将来の健康リスクに直結しているかもしれません。
日本人の1日の平均食塩摂取量は、WHOが推奨する1日5g未満という基準を大きく上回っており、約10g前後とされています[1]。食塩の過剰摂取は、高血圧の主要な原因とされ、これが脳卒中や虚血性心疾患の発症リスクを高めることが数多くの研究で示されています[2]
 
本コラムでは、塩分が体に与える影響や高血圧との関係、さらに「無理のない減塩生活」を支援してくれる栄養指導の活用方法まで、分かりやすく解説します。

1.なぜ塩分の摂りすぎが問題なのか?


塩分(ナトリウム)は、人間の体にとって必要なミネラルの一つです。しかし、必要以上に摂取すると、体はナトリウム濃度を薄めるために水分を保持しようとします。その結果、血液の量が増え、血圧が上昇するという仕組みです。
 
高血圧が持続すると血管に過剰な圧力がかかり、血管内皮の損傷や動脈硬化を引き起こすことで、心不全、脳卒中、虚血性心疾患、慢性腎臓病(CKD)などのリスクが顕著に高まります[3]

📌 目標となる1日の塩分摂取量(厚生労働省推奨)

✅男性:7.5g未満

✅女性:6.5g未満

 
しかし現状、日本人の平均摂取量は約10g前後であり、多くの人が知らず知らずのうちに過剰摂取しています。

2.高血圧の何が怖い?自覚しにくいリスク


高血圧は自覚症状がほとんど現れないまま血管や臓器に深刻なダメージを与え続けるため、「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています[4]
その理由は、症状がほとんど現れないまま進行するからです。
 
多くの方は、健康診断で初めて指摘され、「え、そうなの?」と驚きます。そしてそのまま放置してしまうと、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞といった重大な合併症を引き起こす可能性があるのです。

⚠️ 自覚症状が出にくい高血圧ですが、こんなサインがあるかも:

高血圧は自覚症状が乏しいですが、以下のような体のサインが見られる場合、血圧の影響が疑われることもあります。
ただし、これらの症状は高血圧以外の原因でも起こるため、正確な判断には医療機関での測定が必要です。
 
●頭痛や肩こりが慢性的にある
●朝起きたときに手がむくんでいる
●顔が赤く、ほてりやすい
●すぐ息切れしやすい
 
「ちょっと疲れているだけかな」と見過ごしてしまいがちですが、生活習慣を整えることで、予防・改善が可能です。

3.気づかぬうちに塩分を摂っている食品とは?


塩分と聞いて思い浮かぶのは、「漬物」「みそ汁」「ラーメン」などでしょう。
もちろんそれらも要注意ですが、意外と塩分が多く含まれている“見えない食品”にも注意が必要です。
 

食品 1食あたりの塩分量 特徴
食パン(6枚切り1枚) 約0.8g 意外に多く、2枚食べると約1.6gに
ウインナー(2本) 約1.0g 加工食品には塩分が多く含まれる
インスタント味噌汁 約2.0g 1杯で1日の塩分量の3分の1に
ラーメン(スープまで完食) 6.0〜7.0g 1杯で1日分を超えることも
市販の和風ドレッシング(大さじ1) 約0.5g “かけすぎ”に注意

4.自分で「減塩」は難しい?よくある落とし穴


減塩に取り組もうとする方がよく陥るのが、「塩を減らせば味気なくなる」「続けられない」という壁です。
自己流の減塩では、次のような問題が起こりやすくなります。
 
●味が薄すぎて満足感が得られない
●家族の食事と分けるのが大変で挫折
●「なんとなく減らしてる」だけで、実際の摂取量が変わっていない
●減塩商品を選んでも、別の調味料で味を濃くしてしまう
 
これでは続けることが難しく、結局元に戻ってしまう方も少なくありません。

5.管理栄養士と進める“無理しない減塩生活”


そこで活用したいのが、管理栄養士による「栄養指導」です。
専門知識をもとに、あなたの生活スタイルに合った“現実的な減塩方法”を提案してくれます。

🔽 栄養指導では、こんなサポートが受けられます

・外食や加工食品の選び方(塩分控えめで満足感のあるメニュー)
・家庭で使える“旨味・香り”の活用法(だし、酢、香味野菜など)
・家族と一緒に取り組める減塩レシピ
・塩分を抑えながらも“美味しい”を諦めない工夫
・1日何gまでが自分の適量か、客観的に把握できる
 
「〇〇してはいけない」ではなく、
「これならできそう」と思えるような継続支援が、栄養指導の強みです。

6.中山クリニックの栄養指導でできること

当院では、医師の診断と連携しながら、管理栄養士による個別の栄養指導を行っています。
高血圧や生活習慣病予備群と診断された方はもちろん、健康診断で血圧が高めだった方、「家族に高血圧の人がいて心配」という方でもご相談いただけます。

🧑‍⚕️ 中山クリニックの栄養指導の特長

●完全予約制・個別対応:患者さまのライフスタイルや好みに合わせて対応

●実生活に寄り添った提案:外食が多い方、調理が苦手な方にも続けられる方法をご提案

●無理なく減塩が習慣になる:制限よりも「工夫」で楽しめる減塩生活へ

●医師と栄養士の連携による安心サポート:血圧や検査値をもとに適切なタイミングで指導

 
📌 減塩生活に「正解」は1つではありません。
でも、「あなたに合った続け方」はきっとあります。

👉栄養指導の詳細はこちら

7.まとめ:味を変えるだけで、未来が変わる


「濃い味が好き」
——それは、ほとんどの人にとって“当たり前”の食習慣かもしれません。
けれど、その当たり前をほんの少し見直すだけで、未来の健康が大きく変わる可能性があります。
 
塩分を控えることは、ただの我慢ではありません。
おいしさを保ちながら、体にやさしい食事を続けること
——それを支えてくれるのが、管理栄養士による「栄養指導」です。
 
「味を変える」ことが、「人生を守る」第一歩になるかもしれません。
気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。

👉栄養指導の詳細はこちら

8.よくある質問(Q&A)

減塩したいのですが、何から始めればよいですか?

減塩は「塩を減らす」より「味付けの工夫」がポイントです。まずは、だしや酢、レモンなどの酸味、香味野菜を使ったレシピを取り入れることから始めましょう。市販の調味料の見直しも効果的です。管理栄養士による栄養指導では、無理なく続けられる方法をご提案しています。

減塩でも美味しく食べるコツはありますか?

減塩でも満足感を得るには、「うま味」や「香り」を活用することが重要です。昆布やかつお節などのだし、レモンや酢、しょうがなどを取り入れることで、塩分を控えながらも美味しさを感じやすくなります。栄養指導では、日常に取り入れやすい調理法もお伝えします。

減塩って、塩を使わなければいいだけ?

「減塩=塩を使わない」というイメージを持つ方が多いですが、実は旨味や香りを上手に活かす工夫で、無理なくおいしく減塩することができます。
だし(かつお・昆布)やレモンなどの酸味、しょうがやにんにく、しそなどの香味野菜、香辛料を活用することで、塩分を控えながらも満足感のある味付けが可能です。
栄養指導では、こうした「続けやすい減塩のコツ」も具体的にお伝えしています。

減塩しょうゆや減塩味噌は本当に効果がありますか?

市販の減塩調味料(減塩しょうゆ・減塩味噌)は、上手に使えば塩分カットに役立ちますが、「使いすぎ」や「他の調味料との組み合わせ」には注意が必要です。
また、意識せずにドレッシングやめんつゆ、インスタント食品から塩分を多く摂ってしまっていることも。
栄養指導では、調味料の選び方だけでなく、1日の塩分量をどう管理するかについてもわかりやすくサポートします。

減塩生活をしても、外食が多いと意味がない?

外食では塩分が多くなりがちですが、工夫次第で対策は可能です。例えば「汁物は残す」「ソースは別添えで注文」「味付けの薄い和定食を選ぶ」などです。栄養指導では、ライフスタイルに合わせた現実的な選び方をアドバイスしています。

一人暮らしや外食中心でも、栄養指導を受ける意味はありますか?

もちろんです。一人暮らし・外食中心の方こそ、食生活が偏りやすく、塩分過多になりがちです。
栄養指導では、コンビニや外食でも実践できる「減塩メニューの選び方」や、「忙しい中でも続けられる食事改善」の方法を、一人ひとりのライフスタイルに合わせてご提案します。
「自分に合った減塩の工夫」を知ることで、負担なく健康的な食生活に近づけます。

高血圧と診断されました。減塩は本当に効果がありますか?

はい。多くの研究で、減塩が血圧の低下に有効であることが示されています。塩分の摂取量を1日あたり6g未満に抑えるだけでも、血圧の改善が期待できます。

 
 

引用文献

  1. World Health Organization. (2012). Guideline: Sodium intake for adults and children.
  2. He FJ, MacGregor GA. “Salt, blood pressure and cardiovascular disease.” Curr Opin Cardiol. 2007;22(4):298–305.
  3. Whelton PK, et al. “2017 ACC/AHA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults.” Hypertension. 2018;71(6):e13-e115.
  4. 日本高血圧学会. 『高血圧のリスクと対策』