中山クリニック

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?いびきとの関係と治療法

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群の様子
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まったり、呼吸が浅くなることで、体内に十分な酸素が取り込めなくなる慢性的な疾患です。多くの方に共通してみられる特徴の一つが、いびきです。特に、大きないびきが断続的に聞こえたり、いびきが突然止まった後に再び激しくなるような場合には、本症の可能性が疑われます。

睡眠時無呼吸症候群の症状

こんな症状に心当たりはありませんか?

睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状をご紹介します。自覚症状の感じ方や程度には個人差があるので、可能であれば寝ている間のことについてぜひご家族やパートナーにきいてみてください。下記の症状に該当する方、当サイトのセルフチェックで疑わしいと判断された方などは、医師へご相談されることをお薦めします。

【寝ている間】

  • ・いびきをかく
  • ・いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかき始める
  • ・呼吸が止まる
  • ・呼吸が乱れる、息苦しさを感じる
  • ・何度も目が覚める(お手洗いに起きる)

睡眠時無呼吸症候群の種類と原因

1. 閉塞型(OSA):上気道の閉塞によるもの

閉塞型

閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の各種病型のなかで最もよくみられるものであり、男性の10人に3人以上、女性の5人に1人近くが罹患しています[1]。このタイプは、睡眠中に上気道(鼻や口から声帯にかけての空気の通り道)が物理的に狭くなることで、呼吸が一時的に止まる状態を指します。

【原因】

特に以下のような要因が影響するといわれています:

  • 肥満(首回りに脂肪がつきやすくなる)
  • 扁桃肥大や舌根沈下
  • アルコールの摂取、睡眠薬の使用
  • 加齢に伴う筋力低下(舌や咽頭周囲)
 

これにより、いびきや呼吸停止、断続的な低酸素状態が生じ、結果として日中の強い眠気や集中力の低下、高血圧や心疾患リスクの増加につながります。

2. 中枢型(CSA):脳の呼吸中枢の異常

中枢型

中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSA)は、OSAよりも頻度が低い病型です[2]。閉塞型のように上気道が部分的または完全に閉塞して呼吸が制限されるのとは異なり、CSAの患者さんは中枢神経系に障害が生じています。そのため、脳の呼吸中枢で呼吸抑制が生じたり、吸気を促す信号が適切な関連部位へと伝達されなくなります。

 

【原因】

このタイプは比較的まれですが、以下のような患者にみられることがあります:

  • 心不全などの循環器疾患を持つ方
  • 脳血管障害や脳腫瘍の既往歴がある方
  • 一部の高齢者や、麻薬系鎮痛薬を使用している方
 

中枢型では、「呼吸しなければならない」という脳からの信号が一時的に止まってしまうため、いびきが目立たない場合も多いのが特徴です。

3. 混合型:両方の要因

混合型睡眠時無呼吸症候群は、閉塞型と中枢型の両方の要素を併せ持つタイプです。通常は、中枢型から始まり、その後閉塞型の無呼吸が続くというパターンが多く見られます。詳細な波形解析を行うことにより、混合型であることが判明するケースが多く、適切な診断と治療が不可欠です。

どんな人が睡眠時無呼吸症候群になりやすい?

睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、特定の体型や病歴を持つ方に多く見られる傾向があります。中でも最も大きなリスク因子は「肥満」です。特に首まわりに脂肪がついていると、気道が狭くなり、呼吸が妨げられやすくなります。

また、顎が小さい方や、舌が大きい方骨格的に下顎が後退している方などは、上気道が狭くなりやすく、体型にかかわらずSASを発症する可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の診断・検査

睡眠時無呼吸症候群はどう診断される?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断では、まず問診と自覚症状の確認が行われた後、睡眠中の呼吸状態を測定する検査を実施します。医学的には、10秒以上呼吸が停止する状態を「無呼吸」と定義し、1時間あたり平均5回以上の無呼吸が確認される場合、SASと診断されます。

 

日本国内には推定で約500万人の患者がいるとされていますが、実際に適切な診断と治療を受けているのは約1割に過ぎないとも報告されています。

当院の睡眠時無呼吸症候群の検査の流れ

1.診察および問診

睡眠中のいびき、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状について、医師が詳しくお話をうかがいます。必要に応じて、既往歴や生活習慣についてもお聞きします。

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※内科・消化器内科のご予約をお取りください

2.睡眠検査を実施(簡易PSG・Full PSG)

当院と提携している企業様へ連絡し、ご自宅で行える睡眠検査キットを郵送依頼します。祝日を除く3営業日以内で検査キットが届きますので、睡眠中の呼吸状態や酸素飽和度などを計測します。※検査は自宅で受けることができ、1晩で終わります。

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3.結果説明と診断

約2週間で当院へ検査結果が郵送されるため、再度来院していただきます。検査結果をもとに、医師が睡眠時無呼吸症候群の有無や重症度についてご説明いたします。

4.治療方針のご提案

検査結果に応じて、最適な治療方法をご提案します。治療には、CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)、マウスピース療法、管理栄養士による栄養指導などがあります。

5.治療の開始とフォローアップ

CPAP療法などの導入が決まった場合は、月に1回診察させていただき、定期的なフォローアップを通じて治療効果を確認します。治療中の疑問や不安についても、随時ご相談いただけます。

睡眠時無呼吸症候群の治療

1) 減量

肥満傾向がみられる方は、上気道の閉塞が起きやすくなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)が発症・悪化するリスクが高まることが知られています[4]。実際に「体重が増え始めてからいびきをかくようになった」というケースは多く、臨床的にも減量による症状の改善が多数報告されています[5,6]

減量はSASの根本的な改善につながる重要な治療手段ですが、短期間で劇的な変化が現れるわけではありません。 そのため、必要に応じてCPAP療法などの他の治療法と併用しながら、 栄養指導による体重コントロールを進めていくことが勧められます。

栄養指導の詳細はこちら👈

2) CPAP(シーパップ)療法について

CPAP(シーパップ)は、「経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれる治療法で、就寝時に鼻に装着したマスクから一定の空気圧を送り続けることで、のど(上気道)の閉塞を防ぎ、無呼吸を起こさないようにする方法です。

睡眠中に無呼吸や低呼吸が繰り返されると、酸素不足や深い眠りの妨げとなり、日中の強い眠気や集中力低下、生活習慣病の悪化を引き起こします。CPAPを使用することで、これらの症状を大きく改善できることが、多くの研究で示されています[7]

治療を継続することで、睡眠の質が向上し、日中の眠気が軽減されるほか、心筋梗塞や脳卒中のリスクを下げる効果も報告されています[8]

CPAP療法の詳細はこちら👈

セルフチェックしてみよう!

この「エプワース眠気尺度[3]」は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠障害の兆候を把握するために、世界中の医療機関で活用されています。
あなたの最近の生活のなかで、次のような状況になると、眠ってしまうかどうかを下の数字でお答え下さい。質問のような状況になったことがなくても、その状況になればどうなるかを想像してやってみてください。
状況 ほとんど
毎回眠ってしまう
ときどき
眠ってしまう
まれに
眠ってしまう
まったく
眠らない
1. 座って読書をしているとき3210
2. テレビを見ているとき3210
3. 公共の場(会議・映画館など)で座っているとき3210
4. 乗客として1時間以上車に乗っているとき3210
5. 午後に横になって休憩しているとき3210
6. 座って人と会話しているとき3210
7. 昼食後、静かに座っているとき(飲酒なし)3210
8. 車を運転中、渋滞や信号待ちで数分間停止しているとき3210


全項目の合計点を算出し、下記の表を参考に程度を評価します。

合計スコア 評価 解説
0~5点 日中の眠気は少ない 睡眠障害の可能性は低いと考えられます
6~10点 日中に軽度の眠気あり 生活習慣や睡眠の質の見直しをおすすめします
11点以上 日中に強い眠気あり 睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
医療機関での検査をご検討ください

よくある質問

睡眠時無呼吸症候群を放置しているとどうなりますか?

睡眠中に呼吸がたびたび止まることで、体は酸欠状態に陥り、少ない酸素を全身に送り届けようと心臓や血管に過剰な負担がかかるようになります。このような状態が慢性的に続くことで、高血圧や糖尿病、脂質異常症など、さまざまな生活習慣病を引き起こす原因となります。実際、健康な方と比較すると、脳卒中の発症リスクは約3.5倍、心不全は約4.3倍、不整脈は約3.3倍に上昇すると報告されています。さらに、1時間あたりの無呼吸回数が20回以上となる「中等症」から「重症」に分類される場合、7〜8年後にはおよそ20〜30%の方が脳梗塞や心筋梗塞などの重大な心血管イベントを発症するとの報告もあります。こうしたリスクを未然に防ぐためには、早期の診断と適切な治療の開始が極めて重要です。

睡眠検査や治療には保険が使えますか?

はい、当院で実施している睡眠検査やCPAP療法は、健康保険が適用されます。

睡眠検査の費用はいくらですか?

簡易PSG検査は3割負担:2700円、Full PSG検査は3割:11250円となります。別途、診察料がかかりますのでご了承ください。

睡眠検査は入院しないといけませんか?

当院で実施している睡眠検査は、入院の必要はありません。ご自宅で行っていただけるPSG検査を導入しており、就寝前に小型の測定機器を装着していただくだけで、睡眠中の呼吸状態を記録することができます。この検査で使用する機器は、入院による精密検査(終夜ポリソムノグラフィー)と比較しても、測定項目や精度に大きな差はなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断において十分な信頼性を備えています。

CPAP療法に使用する機器は毎日使わないといけませんか?

はい、効果を十分に得るためには毎晩継続して使用することが大切です。途中で使用をやめると、無呼吸の状態が再び起こり、症状が悪化する可能性があります。

CPAP療法に使用する機器は外出時や旅行先でも使用できますか?

はい、CPAP機器は持ち運びが可能で、旅行先や出張先でも使用できます。

一度始めたら一生続けなければいけませんか?

すべての方が一生続けなければならないわけではありません。体重の減少や生活習慣の改善により、無呼吸の症状が軽くなり、CPAPが不要になるケースもあります。定期的な診察・検査を通じて、継続の必要性を判断します

アクセスマップ

アクセス方法

中山クリニック

〒674-0071 明石市魚住町金ヶ崎370
国道2号線沿いの三菱マテリアルコベルコツール西隣

専用駐車場
50台(第2・第3駐車場もあります)
最寄駅
JR 神戸線・大久保駅より徒歩15分
神姫バス・金ヶ崎、金ヶ崎東口より徒歩3分

引用文献

  1. Peppard PE, et al. Am J Epidemiol. 2013;177(9):1006–1014.
  2. Morgenthaler TI, et al. Sleep. 2006;29(9):1203–1209.
  3. Johns MW: Sleep 14: 540-545, 1991より引用改変
  4. Young T, et al.N Engl J Med. 1993;328(17):1230–5.
  5. Peppard PE, et al.N Engl J Med. 2000;342(23):1617–23.
  6. Foster GD, et al.Am J Respir Crit Care Med. 2009;179(4):320–7.
  7. Patil SP, et al. J Clin Sleep Med. 2019;15(2):335–43.
  8. Marin JM, et al. Lancet. 2005;365(9464):1046–53.